<side 静>

 

 

 

僕はお父さんと眠ることになった。

 


 

 

赤ん坊の頃、その胸に抱かれていたのだろう。

 

 

 

記憶にないけれど 側にいるだけで安心できる。

 

 

 

 

 

「しずちゃん、 智子さんはお元気ですか?」

 

 

 

「あ・・・はい」

 


 

 

たぶん・・・・

 

 

 

 

 

「驚きました。しずちゃんが恋人を連れてきてくれるって智子さんから聞きました」

 

 

 

「はい・・・・・」

 

 

 

「まさか男の人を連れてくるなんて びっくりです」

 

 

 

 

 

呆れた様子はなく微笑んでくれたから僕はホッとした。

 

 

 

「お父さん、僕が女の人と結婚したほうが嬉しいですか?」

 

 

 

「ん~・・・いいえ。

 

 

 

 しずちゃんが一番好きな人と一緒になってくれるほうが嬉しいです。

 

 

 

 だから秀斗さんを連れてきてくれて お父さん嬉しいね ^^」

 

 

 

「お父さん・・・・・」

 

 

 

 

 

「しず・・・・苦労しましたか?」

 

 

 

「え」

 

 

 

「いじめられたりしませんでしたか?」

 

 

 

 

 

 

 

( 外人!  目が気持ち悪い! 犬! 猫だよ猫!

 

 

 

 女みてぇ! ちゃんとついてるのかよ? パンツ脱がせようぜ!

 

 

 

 やだっ! やめて! やめて!!)

 

 

 

 

 

 

 

「いいえ・・・・・」

 

 

 

 

 

お父さんはポンと僕の頭に手を置いて 優しい声で言ってくれた。

 

 

 

 

 

「その目はお父さんと同じです。

 

 

 

 しずちゃんの苦労はお父さんの苦労と同じです。

 

 

 

 辛い想いをさせてしまいましたね」

 

 

 

 

 

「・・・・・父さん」

 

 

 

「智子さんのこと、大好きだったんですが・・・・・

 

 

 

 私、語学の先生していたんです」

 

 

 

「はい、知っています」

 

 

 

「何故かお給料が貰えなくなって・・・学校も無くなってしまいました」

 

 

 

「え」

 

 

 

「それで・・・夢だったカフェをしようと思ったのですが・・・

 

 

 

 忙しくって友人とばかり過ごすようになって・・・・

 

 

 

 智子さんに嫌われちゃいました。 ハハハ (^_^;)」

 

 

 

「なんで・・・・」

 

 

 

 

 

そうか・・・

 

 

 

だから母さんは、

 

 

 

自分だけを見つめてくれる 余裕のある暮らしの出来る人を

 

 

 

次に選んだんだ・・・・

 

 

 

 

 

「しず、いいですか。 秀斗さんを大事にね。

 

 

 

 自分のことだけを考えていたら嫌われますよ」

 

 

 

「・・・・はい、そうですね。 大事にします」

 

 

 

 

 

「あまり愛情を押し付けても嫌われますよ。 気をつけなさい」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

「秀斗さんのお父さんとお母さんには会いましたか?」

 

 

 

「はい。 会ってきました。 一緒に暮らすことを許してくれました」

 

 

 

 

 

「さすが私の息子ですね。 可愛いし賢いし。 高校の先生になりますか」

 

 

 

そう言って笑顔で頭を撫で撫でする。

 

 

 

 

 

「しずちゃん、智子さんに似てるね」

 

 

 

「はぁ・・・・」

 

 

 

じゃあ萌美とも似ているのかなぁ・・・・

 

 

 

 

 

「来てくれてありがとうございます」

 

 

 

と頭を下げられた。

 

 

 

 

 

「父さん・・・・・・」

 

 

 

 

 

ぎゅうっと抱きついたら 涙が出てきた。

 

 

 

堪えていた何かがいっぺんに溢れ出すように。

 

 

 

 

 

「あれあれ、しずちゃん 赤ちゃんみたい」

 

 

 

「ううう・・・・ううう・・・ お父さん・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

もしもお父さんに影ができたら

 

 

 

きっと大きな樹のような影だと思った。

 

 

 

木漏れ日を届け 雨から守ってくれて

 

 

 

小鳥が羽根を休めるような 大きな樹。

 

 

 

 

 

たくさん泣いて泣き疲れて お父さんと並んで一緒に眠ったら

 

 

 

かもめになって空を飛んでいる夢を見た。

 

 

 

フィンランドの子守唄を聴いた気がした。

 

 

 

二十三年前の記憶が 優しく蘇るようだった。

 

 

 

 

 



ぐりこのSORA


 

 

 

 

~つづく~

 

 

 

お届け曲音譜 アンダンテ・カンタービレ    チャイコフスキー