わたしゃ久留米の 機織り娘よ
化粧ほんのり 花なら蕾よ
ここは大阪 道頓堀。
湯浴みをして 前の客の名残を残さんようにせんと・・・
男娼楼で働いても働いても
借金は なかなか減ってはいかない。
「恋十(こいと)太夫、 大丈夫ですか?」
廻し方の吉三さんだった。
大丈夫か というのは、次の客を取っても大丈夫か という意味だ。
「へえ。 大丈夫や」
「東京の福山さんです」
えっ
思わず胸の前で手を握る。
熱い・・・・
先生・・・来てくれたんだ。
「すぐ、出ますよって」
「へ。 上がってもろうときます」
「あ、吉さん」
「へ」
「心ちゃんやけどな、うちのツケで花名刺 作ったってや」
「ああ・・・ええんですか?」
「それくらい 上のもんがしてあげんとなぁ」
「そら おおきに! あの妓も折檻受けて泣いとったさかい・・・」
他の妓の水揚げを見て 恐ろしくなって逃げ出そうとしたまだ十代の男の子。
「色もええのん選ばしたって。 せや、先生んとこに碁盤持っていっといて」
「へ。承知しました」
「ほな、出るで」
「へ。ご苦労さんでございます」
◇
惚れちゃおれども まだ気がつかんかね
「おやまぁ、恋十ちゃん。おはようさん」
「あ、楓太夫 おはようさんでございます」
「湯浴みかえ? もう客取ったんか」
「・・・・・へぇ」
娼妓の嫉妬をひとつひとつ取り上げていったらきりがない。
「とんぼり(道頓堀)のこいさんは 昼も夜もよう働くゆうて評判や」
「・・・おおきに」
楓が 顔を思い切り近づけてきた。
僕は怯んだら負けだと思って 睨みを効かせた。
「間夫が来たんやって?」
「・・・・・」
「あんたみたいな借金まみれの妓ぉが間夫やなんて
おかしいやら 哀しいやら。危なっかしゅうて見てられへんわ」
「お先に失礼いたします」
「ちょっと待ちっ」
浴衣の襟を掴まれた。
「あんたにはなっ どんこ釣りのエテ公がお似合いや!」
パシーン!
乾いた音が響いた。
「おかあさん」
「楓ちゃん、ええ加減にしとき。 恋十ちゃんも はよう行きや」
「・・・へ」
◇
「お待たせしました。恋十です」
するりと入るといきなり抱きしめられた。
「恋十・・・・」
「せ、先生」
「会いたかったんだ、ずっと。ずっと」
「・・・・うちも」
熱い抱擁に胸が高鳴る。
他の誰でもない、あなたが好き。
うちは 自分から貞操の唇を先生に合わせた。
「今日はお前に話がある」
え・・・
鳩尾のあたりが ざわりと波立った。
続く。
