皆様 おはようございます。
宝生千鶴です。
私が病院に担ぎ込まれて 何ヶ月経つのでしょうか。
作者の千恵・ぐりこは何をしているのでしょう。
「やべ~ フェルマーの最終定理 おもろー!」
「能、はまる~!」
「大学行きたいから勉強するねん」
などと 相変わらずアンポンタンな様子で
雪が可哀想です。
と、いうことで 今夜は皆様に
能について 少しお話したいと思います。
物語のはじめに、私が能面を雪に渡すシーンがありますが
本来、 能の経験もない若者に 宝である面(おもて)を渡すことは
絶対にありません。
現に私も 小さい頃は 面にも 楽器にも触らせてはもらえませんでした。
でも 雪に渡してしまったのは・・・
公私混同はいけないことですが、既に心奪われていたのでしょうね。
少年の頃は 子方(こかた)という役でした。
能面は大きさが決まっています。
体が成長しないと 着けられないのです。
初めて面を着ける 「初面(はつおもて)」という儀式の前日は
緊張と嬉しさで なかなか寝付けなかったことを覚えています。
私が14歳の時でした。
どうですか?
元服に似ているでしょう?
私にとっては この儀式こそ元服だったのです。
実母や継母に見てもらえなかったのが残念です。
さて、 雪が怖がっている「道成寺」の鐘入りですが
この鐘、 重さは約80kgほどあります。
自分が飛び上がり 上から落ちてくる。
「道成寺」は習いものでも 奥伝の秘曲です。
父の千草は戦争で失明しましたが
能の中には、面をつけて尚且つ 目を閉じて演じるものもあります。
そのとき 足の運びは
「心」という字を描きながら演じるのです。
これは真上から見ないと解らない事で
当然 お客様からはわかりません。
しかし そこに妙なる能の美学があるように思えます。
ところで皆さんは 信長に扮した役者が
人間五十年 と舞う演技をご覧になったことがおありかと思います。
信長は 能を愛していたのです。
小鼓を嗜んでいたそうですよ。
そして 梅若という能楽師を慈しんでいたそうです。
息子の信忠が能に夢中になっていると知ると
能のお道具を全部 梅若に渡したそうです。
太閤秀吉は 大和四座を保護し、
徳川家は観世、喜多、宝生を愛でたそうです。
武家と能の関わり、 能の存続が危ぶまれた時期が到来しました。
明治維新です。
消滅の危機的状況でした。
それを救ったのが・・・・
天皇家でした。
さて、ここで愛親覚羅溥儀について・・・
彼は 一般市民になって再婚します。
その彼女が仕事を終えて 会社から出てくるのを
雨の中 溥儀はじっと傘をさして立っていました。
「まぁ あなた どうなさったの?」
溥儀は視線を落としますと そこには工事かなにかの穴が空いていました。
「君がこの穴に落ちやしないかと心配で・・・・」
「それで・・・・ずっと待っていて下さったの?」
「さぁ、帰ろう」
紫禁城が落日を迎え 婉容皇后に対しても
こんな 優しく 切なく 安心できる愛情を向けていたら
婉容皇后は あのような最期にはならなかったでしょう。
源氏の君も、女三宮も 溥儀も
愛を知るのが遅かったのです。
嗚呼・・・苦しくなってきました。
千恵・ぐりこよ、 早く更新しておくれ。
宝生千鶴。