気付けば杖をつくようになり






気付けば家中手すりだらけ







そして車椅子生活になったかと思えば、







最終的には1日を介護ベッドの上で過ごす。










転がり落ちるように、

悪くなっていく一方で、

家族への負担は重くなるばかり。









父も母も、

70過ぎ。









現実はなかなか厳しく、

人間は感情のある生き物ですから、

やはり先の見えない状態が続くと、

負の感情が見え隠れするものです。








いつまで続くのだろう。









ニュースで見るような事件のきっかけは、

まさにこんな日々が何年も続いた結果なのだろうと。







福祉に頼ったとしても、

限界はある。








体力や感情は福祉では簡単に補えるものではない。









誰が悪い訳でもなく、

誰のせいでもない。










そして、

それは父との最後に繋がっていきました。









週末。

私は高熱でうなされていました。

40.2度。

前日の暑い中三男の付き添いで一日中外にいたせいだと思っていたんです。








体が動かない。

頭も回らない。

休日で病院も開いてない。









そして、

そんな中兄から連絡がきました。






おかんが高熱で、

おとんも熱がある。

とにかく救急車をよんだらしいから、

俺は実家に向かってる。









ごめん。

私も高熱で死んでます。

頭が回らない。









え⁈

わかった!

俺が行くから心配せんでいい。

寝とけ。










熱でうなされていても、

夫の体調が悪ければ、

横になることすら出来ない。








自宅介護とはそんなものなのでしょう。

自分がきつくても、

高熱があっても、

母は父の為にやっていました。









数十分後にまた兄から連絡がきました。







今コロナの検査をしてもらっていて待機しているから、

何かあればまた連絡する。

このまま入院の方向にもっていかないと、

もう無理だろ。

足の痛みもずっと言ってるから、

おかんがレントゲンもとるように言ってくれって頼まれた。






そうか。

コロナか。

そのパターン考えてなかったわ。

昨日暑い中、

一日中外にいたから熱中症かと思ってた。

足のレントゲンね。

とりあえずまた連絡して。







10分もたたないうちにLINEがきました。





おとんコロナ。

このまま入院。

おかんも、お前もコロナ決定。

とりあえず、

荷物とかは俺が取りに行くし、

早く治せ。







ありがと。








病院の付き添いでしか、

外出していなかったので、

その時にうつってしまったのでしょう。

時期的にも、

コロナという病気が落ち着いてきていたので驚きましたが、(我が家は誰もかかった事がない)

夫と三男の隔離も含め、

しばらく一人で過ごしました。









数日後。

病院から連絡がきました。

担当医師から病院で説明があるとの事でした。








午後から病院に向かい、

医師からこう伝えられました。










足の痛みの事ですが、

レントゲンの結果、

大腿骨に転移が見られます。








見せられた太もも部分のレントゲンは、

素人の私が見てもはっきりとわかるくらいに

真っ黒になっていました。









肝臓癌再発からの転移。

所謂、

進行性末期癌です。









何の言葉も出ませんでした。

返事をする事もなく、

疑問があるわけでもなく、

本当に頭が真っ白になった感覚でした。









本人はとにかく足の痛みを訴えていますので、

足の放射線治療を受けた方が良いと思います。

その場合、

一度転院してもらい、

術後こちらに戻ってくる形になります。










わかりました。








理解はしているものの、

医師の話を一人で聞いたからなのか、

父の最後に近づいたからなのか、、、








私は不安のようなものに、

押しつぶされそうでした。







転移

末期癌

放射線治療






心の中で整理をつけながら、

ふと思いました。









父親の顔がうまく思い出せない。








そうだった。

私あんまり父と目を合わせて話した事、

なかったかもしれないな。











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