父の肝臓癌は腫瘍が3つありました。
医師の説明では、
幸いにも腫瘍の場所が密集しているので、
肝臓を半分残す形で切る事も出来るとの事でした。
ただ父は、
数年前に心臓のカテーテル手術をし、
血液がサラサラになる薬を飲んでいるため、
リスクがあるとの事でした。
簡単に言うと薬を飲んだまま手術を受けると、
出血が止まらない。
もちろん手術を受ける2週間前から薬を止めるのですが、
薬を止めると心臓の血管が詰まる可能性が出る。
そしてもう一つは、
カテーテルを入れ、
直接抗がん剤を腫瘍にアプローチする方法でした。
他にも色々なネックがありました。
肝臓を切る場合。
癒着が多いこと。
それは開いてみないとわからない。
諦めないといけないと言う事もある。
術後、
肝臓の機能がもつかどうかも不明。
医師の説明を受けている途中からすでに、
カテーテルしかないな。
そのくらいに私は思っていました。
ただ父の考えは違っていたようでした。
父は医師に言いました。
手術をしない場合は、
すぐに死ぬんですか?
どのくらい生きれますか?
明日、明後日死ぬという事はありません。
ただし、
一年二年生きれますという補償も出来ません。
放っておけば、
確実に腫瘍は大きくなり破裂します。
その日は突然です。
手術をすれば、
もちろん人間なので寿命はありますが、
長く生きれます。
父の中であったのでしょう。
入院し、
手術を受けて数年しか生きれないならこのままで良いと。
苦しい思いをしてまで、
やりたくないと。
ただ、
何もせず数年生きれるかの保証なんてどこにもありません。
おとんの好きにしたらいいやん。
あと、どのくらい生きたいんよ。
別に怒って言った訳でも、
投げやりに言った訳でもありません。
父の人生。
父が決めれば良い。
ただし、
これ以上家族《兄と母》に迷惑をかけるのだけはやめといて。
そのくらいの気持ちでした。
金銭的な面では兄が担っていましたし、
家での事は母が、
私は病院の付き添いや手続きなどをやっていました。
父は何も言いませんでしたが、
死にたくもない。
ただ、入院も手術もしんどい。
子供のような気持ちだったのでしょう。
結果的に、
不貞腐れるようにカテーテル手術を受け入れました。