自宅までの帰り道。
私は前を向けなかった。
兄が気を使って話しかけていたと思うが、
話は入ってこなかった。
怒られる。
殴られる。
そういった事を超えた感じだったと思う。
何をされるかわからない。
そんな恐怖でいっぱいだった。
家につくまでの最後の曲がり角を曲がった瞬間。
私よりも先に兄の足が止まった。
私はそこまで来て、
初めて顔を上げた。
街灯に照らされた父が立っているのが見えた。
とにかく謝れ、、、。
いいけ謝れ、、、。
兄が言ったその言葉だけが、
私の中に入っていった。
父が立っていた場所を直視する事が出来なかった。
このままもう逃げ出したい。
その気持ちとは裏腹に兄は歩き出し、
私はそこについていくしかなかった。
父の視界に入った恐怖で心臓が潰されそうだった。
そして父の下まできた時に、
父が手に持っていた竹刀が目に入った。
そこからの事は全てが一瞬。
入れ。
私の横腹を竹刀で押したまま、
路地奥にある玄関まで連れていかれた。
そのまま玄関を開け、
和室まで押され続けた。
座れ。
ドスの効いた低い声でそう言われ、
私はそのまま崩れるように正座した。
座ったと同時に私の頭に衝撃が走った。
父は持っていた竹刀で私の脳天を打ち付けた。
衝撃と同時に正座していた私の体は崩れた。
竹刀を持って仁王立ちしている父、
泣き崩れている母、
私はこんな両親の元に生まれ、
何のために生きていかなければならないのか。
そもそも何故、
私を産んだんだ。
何の力も湧き出なかった。
父は私に罵声を浴びせていたが、
何を言われたか記憶にない。
ただ最後に言われた言葉だけが、
すんなりと私に入ってきた。
そんなに出て行きたいなら出て行け‼︎
私は拳を握りしめ、
スッと立ち上がりこう言った。
こんなクソみたいな家出ていってやる‼︎‼︎
私は父を睨みつけ、
部屋を出ようとした。
そして父がまた罵声を言いかけた時に
静かに兄が言った。
お前が出て行く必要はない。
私の握ったままの拳の手首を握り、
父に背中を向けたままの私の前に立った。
私が真っ当な道を歩けているのは、
紛れもなく兄のおかげだと言っていい。
兄がいなければ、
どうなっていたかわからない。
少なくとも私は家族という輪からは外れていたのではないだろうか。