モルヒネ








先生に尋ねた。



「モルヒネは打てますか?」と。
















先生は



「打てなくは無いけど、

眠ったようになるから

そのまま直ぐ逝っちゃうって事が良くあるんだよね」と。
















それじゃ困る。


母は兄に会いたがっている。


明日の朝一の便で来ようとしている。














せめて母が着くまでは


こちら側のエゴで申し訳ないが


″心臓が動いていて欲しい″のだ。















苦しむ兄を前に言った




「母が来るまでは

打たないでください」






先生からは


「打っても打たなくても

明日まで持つかわかりません」


と言われた。











母が今の兄の姿を見たらきっと





「直ぐにでも楽にしてあげたい」

「お母さんが変わってあげたい」



きっとそう言う事は分かっていた。













だけど…






苦しむ兄の姿を


世界一頑張っている


兄の最期を見て欲しかった












貴方が来るまで


耐えきった兄の人生で


数少ない頑張っていた姿を


その目で見て欲しかった。










そして


兄なら頑張って耐えてくれると

本当にそう思った








意識があるか

無いのか

声が聞こえているのか

聞こえていないのか



そんな事は私たちには分からない











ただ、



届いていると信じて


言葉を掛ける時間が

欲しかった



残された私たちが

強く生きていく為に。