新幹線の中で。
なんとか新幹線に乗り、席に座る。
ふと見上げた電光掲示板の文字…
”人身事故の影響により”
…くれよ。その命。
要らないなら…くれよ。
そうねじ曲がった思いでいっぱいになる。
自殺した人にだって
色んな事があって
生きている事を
終わらせたい位で…
そんな事はわかっている
人には人なりの事情と生き方がある。
そして死に方もある。
だけど、そんな文字を見ると
悲しくて、悲しくて仕方なかった。
このご時世で良かった事といえば
マスクのおかげでその時の
涙が誤魔化せた事だろう。
ふと携帯を見てみると
LINEが3人から来ていた。
全部職場の方からだった。
「職場の事は気にしないで」
「気をつけて行ってらっしゃい」
思いやりが込められたメッセージが来ていた。
迷惑しかかけていないのに
なんていい人達、職場なんだ。
と、改めて思った。
新幹線の中で頭は真っ白だったが
″言い残した事はないか″
″何を伝えるべきか″
そんな事だけは考えていたような気がする。
兄がどんなに辛い状態なのか
そんな事は辛くて、想像すらしたくなかった。
0:30到着
数時間後…無事大阪に着いた。
無事に着けた安堵感はあったが
街灯が少なく、夜道が恐ろしい。
兎にも角にもタバコが吸いたかったので
コンビニを探すも遠い。
コンビニのお兄さんに
″この近くの満喫″
を尋ねるもかなり距離があるとの事だった。
そしてまた先程降りた廃れた駅の前を
通りがかると
白髪頭のおばあさんがこんな夜中に
最終電車も終わっている
駅の改札口付近をウロウロ1人歩いている。
歩いているというより
徘徊しているようだった。
そのおばあさんはまだまだ
寒いこの時期に薄着だった。
そしてそのおばあさんが話したそうに
こちらに向かって歩いてくる…
介護職ではあるものの、怖いものは怖い。
夜道に誰も歩いていない・且つ、
街灯もほとんどない事、そして
遠くから見ても分かるくらい
目がギラギラしていた。
怖くなった私は走って病院へと向かうのだった。