1日目の夜







「なんて不謹慎な!」と思う人も居るかもしれない。





私は兄がそんな中、外へ母を連れ出した。







まだ死んでいないのに


ホテルで母と2人、葬式なんかしたくないし











それよりも、明日の話の手土産に

母との思い出を作って

アイツに持って行きたかったのだ。











1つ目の居酒屋はパリピが沢山居て断念。


近くにあった年配の方でも


落ち着いて入れそうな寿司屋に入った。














飲む気満々の私はハイボールを注文。


あまりにも母が可哀想になった為











「ノンアルビールなら

いいんじゃない?」


と、勧めてみたら、了承してくれた。
















2人で初めての乾杯。


思えば酒なんか、母の前で飲んだこともなかった。


昔は母の背中を見たせいで


酒がだいっきらい だった。


その私が今となってはこうだ。


人生は分からない事だからけである。











そんなこんなで


美味しいものを母に食べさせたかった


私だが、回らない寿司屋に


入って行ってしまっていた。


そして回らない寿司は初めてだった。
















この見た目で値段もリーズナブルな事に驚く。


そして何よりも


醤油が美味い!!










関東に来てからというもの、


この刺身にまとわりつく醤油が


懐かしくてたまらなかった⋯










ピカピカのお寿司を食べ


それから、沢山のツマミをいただいた。


どれもこれも本当に美味しかった。















・焼き白子

・なまこポン酢

・カマ焼き















そして飾ってあった菊の花が綺麗で、


生花なのか確認したくて


口に入れてみる・・・












ん⋯?どこか懐かしい⋯?味?









「なんか懐かしい味するんだけど」


と、母に言うと












「あー、昔お父さんが何でも

食べさせよったけんね」と母が言う。









「あーそれで懐かしかったんやぁ。」

と私。




今考えてみれば面白い父だった。

















そんなこんなで沢山母と話をし、


兄の為だと言い、



兄の分まで酒を飲み干した。












この日の最後の記憶は


予想以上に頼みすぎてお腹いっぱいに


なってしまった私の姿を見て


少食のあの母が、


頑張ってカマ焼きを食べていた姿だった。













気づけば記憶は無く、次の日の朝⋯


ツインベッドの隣には母が寝ていた。











あぁ⋯朝が来た。


アイツに会える⋯


と、嬉しくなる。









そして、また昨日の姿を思い出し


母に気づかれないよう涙を流した。