看護助手





手に職も何も持っていなかった私は


なんとなく資格がなくても出来る


仕事を探していた。


なんとなく。そんな気持ちで


介護職に就こうと思っていた。













介護職の派遣に登録し


面接地に行くとそこは病院だった。


”病院?話が違う”


と思いつつも、話を聞いてみる事にした。













「介護度は高めですが慣れれば


平気になってきますよ」と派遣先は言う。











面接が始まり、中を見学させてもらう事に。










「偏見などはありませんか?

障害を持っていたり介護レベルも

高い方もいらっしゃるので…」と。











「ありません」と言い、病室を案内される。














見るからに手足が不自由な人…


寝たきりで声をあげ続ける人…


そして人工呼吸に繋がれ息をする人…













しばらく見てまわり、看護師さんから


「どうでしたか?」と聞かれる。














自分の言葉を発そうとするも


涙が出てきて声を詰まらせる…


看護師さんを驚かせてしまった。










「びっくりさせちゃいましたかね?」








「すみません…父を思い出して…


数年前父が亡くなったんですけど、


同じ様に人工呼吸器着けていて


私その時何も言えなくて…


それを思い出してしまって…


だから、私頑張りたいんです!」










と。伝えると看護師さんも


気づいたら目を潤ませていた。















面接時に泣いてしまい最悪の面接に


なってはしまったが、


私にとってはあの時わからなかった


「父の最後の景色」に触れられるのが


この世界なのかもしれないと思った。


















その病院とは縁はなかったのだが


2件目に受けた病院で無事


看護助手デビューを果たす事となる。