真っ黄色の男性









見た瞬間思ってしまった。


人間の色じゃない…


私の知る兄の色では無い。












これは助からないだろう…


そう一瞬で家族が思ってしまう程の


黄疸だった。









マネキンに水彩絵の具の黄色を薄めて


全身に塗ったみたいだった…











兄は目を瞑ったまま…反応がない。


ピーッピーッピーっと機械音だけが響く。


声をかけ続けるも


あまりの酷さに涙が出てくる。










「ちゃんと聞こえてるだろうから

話かけてあげて」と、母に言う。











が、母はあまりの光景に、名前を呼び


手をさするばかりで何も言えずにいた。














もし、今日が最後の家族との時間になっても


おかしくはないだろうと、悟った。











私は母に「どいて」と言い、


兄の顔の真横に陣取る。


限られた時間は20分しかないのだ。












「おい!〇〇!来たぞ!

何してんのお前」とまた、話かける。











すると、兄の目が一瞬開き


目が合う。


そして、すぐに目が閉まる。














母が泣きながら喜ぶ。


「目が開いたね。


ちゃんと聞こえてたんだね…」











母に変わり、話をさせる。


名前を呼ぶ母…


だが、目は開かない。












しかし、また私が名前を呼ぶと


顔の向きは正面を向いているのに


一瞬目を開き、こちらに黒眼を向けるのだ。











「うぅ…」と兄が声を出すが言葉が出ない。


うなされているのか、痛いのか、


話したくても声が出ないのかは


正直わからなかった。











ただ、”諦めて死にたい人”の


表情には家族目線思えなかった。












続けて話かける。



「おい、お前!頑張れるだけ頑張れ。


もし、頑張れなくなったら


その時は考えるから、頑張れるだけ頑張れ。」


と言った。














そして


「もしお前が頑張れなかったら

その時は私の守護神になれ!」


と、笑顔で言った。







「お前、頼むから悪霊にはなるなよ?


なるなら守護神!分かったな?」


と、冗談も付け加えて。













精一杯の私のジョークで


本気の私の気持ちだった。











兄に聞こえるよう耳元で大きな声で言った。


すぐ隣には意識のある患者さんや、


看護師さんやお医者さんも居たが


気にとめている場合ではなかった。











この日が最後になるのかも

しれないのだから。

そう思うくらい兄の容態は悪かった。











そして母は相変わらず泣いて


手をさするばかり…












”あぁ、父の危篤状態の時の私みたいだ”


”それから何年も後悔するんだっけ…”


などとふいに、冷静になる私。
















ふとこんな言葉が出てきてしまった…







「これが最後になるかも

しれんっちゃけん、

母親らしい言葉

ちゃんと伝えんね!!」










昔の自分を見ているようで苛立ったのか、


兄を思って出た言葉なのか


何なのかはわからないが


つい声を荒らげてしまっていた…










すると母は



「ごめんね…ごめんね…お母さんが


アンタをこうさせてしまったのかも


しれんね…ごめんね…」と泣き崩れる。







母の本心だろう。












私もそれを見て泣いてしまう。


「お母さんのせいじゃないよ」とは


私も言いきれなかった。













20分も経たないうちに看護師さんが


やってきて、


先生から病状説明して貰える事になる。














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