そして兄に会いに行く








母と打ち合わせをし


初めての大都市に着く。








思い返せば母と会ったのは


何十年ぶりだっただろうか…


中学3年の頃が最後だった。












キヨスクの裏手に、白いジャンパーを着た


少し派手な髪色をした女性。


2度見しないと分からなかったが


そこには母が居た。










話はするものの、2人共落ち着かない。


なんせ19年振りなのだ。









母が、目の前に来ている新幹線に乗り遅れた


その瞬間から、遅刻は決定していた。


病院の好意で、面会時間を変更させてもらった。











直ぐにでも病院の最寄り駅に


急ぎたい私をよそに、母の歩く速度が遅い…













私の記憶では、早歩きでせかせかしている


そんなイメージだった母が


今となっては、後ろを振り返らないと


心配にすらなる程だった。












時の流れを感じる…


母もこんなに老いていたのか…













明るく振る舞うけれども


話が進まない。


どんな話しをしたらいいかわからない。


そして面会前で2人共ピリピリしていた。











 そして病院に着く









なんとか辿り着いた病院を前に


唖然とする。こんな大きい病院に


アイツ(兄)がいるのか…


大丈夫なのか、余計不安になる。


兄の居るICUを目指し母と進む…












集中治療室前の待合椅子に掛けて待つ…。


横には面会を待っているであろう夫婦が


ウロウロしながら病室の扉の前で


ソワソワと面会を待っている。










面会初めての私たちに


「この紙書いて待たなきゃダメですよ?」


と少々ヒステリー気味に教えてくれた。


書き終わり、その時を待つ…。










看護師さんが出入りする扉の隙間からチラッと




若いが、とても具合が悪そうな男性が見える…





ICUの雰囲気とピッピッピッピッーという


耳障りな音に緊張が走る。














″頼むから元気でいてくれ″


″あれは兄?…違うよね?”


そう思いながら時を母と待つ…


早く会いたい…
















15分程待っただろうか。


名前が呼ばれ順番が回ってくる。










フェイスシールドをし、念入りに消毒。


2人で病室へ入る…












「こちらです」


手を差し伸ばしたその先には


先程の具合の悪そうな若い男性が居た。












見た瞬間涙が止まらない…


笑って話せると思ったのに…













そこには、沢山の管に繋がれた


真っ黄色な肌の色をした


若い男性がベッドに横たわっていた…