父の葬式






結果から言えば


父の葬式に母は来なかった。











兄は仕事で来れなかった。





義理の2人の兄妹も来なかった。





私だけだった。











葬儀の日私だけが泣いていた


叔父さんも叔母さんも泣かなかった



そんな父を不憫に思った。






棺の前でぐちゃぐちゃになりながら


私一人だけが泣いていた。









物心着く頃から言われていた


「泣くな」と。


でも泣き虫の私には無理だった。









幼少期以来、父の前であれ程泣いたのは


その日が最後かもしれない。










 兄の余命宣告






そんな昔の話があったわけだが



話は戻って、兄の件を母に話さなければいけない。









父の葬式にも来なかった人。



そんな人が兄の病状を聞いて来るのか。








いつからか親に期待しなくなった







親らしいとか


親だからとか


親ならばとか。









携帯の名義人になってもらいたい時も


初めての一人暮らしの家を借りる時も


成人式の時も…









借金なんかして迷惑かけた事もないのに



いい子で居るように努力したのに



いつも母親や父親に助けを求めた時



助けて貰えなかった。







だから、いつからか


親だと思わない事で


自分の気持ちを楽にしていた。







どんな状況も、環境も


”仕方ないんだ”と言い聞かせた。









でも今回ばかりは


そう言いながらも…








​母親へ電話







「もしもし、あのさ…


〇〇がさ…余命宣告受けて…」







「え?なんで?」








「酒の飲みすぎだね。」







「あのバカ何してんのほんと…」






「とりあえず私は仕事先に連絡して


早めに行けるように手配してあるから


側でサポートしたいと思ってる」







「え?アンタ仕事もあるのに


大丈夫なの?」







その時の私は冷静ではなかった


こんな時に頼れるのが


アイツ(兄)には私しか居ないのが


わかるからだ。









自分を重ねてしまう



楽しい時の記憶は少ない。



だけど私には、アイツの辛さが分かる。



辛い幼少期を一緒に乗り越えてきた



過去がわかる。










「お母さんは無理しなくていいよ。


私が行って、借金でもなんでもして、


家かなんか借りてアイツの最後まで


看取るから。


自業自得だけどさ…だけど


アイツ1人で死んでいくの可哀想じゃん。」と






そう言った時涙が止まらなくなった。











そして恐れた。こんな状況なのに


「仕事があるから」なんて


言い出しそうな母親の事が。










そんな事を言われたら


こんな状況にも関わらず







「アンタが産んだ息子だろ!

何でだよ!おかしいだろ!」






と、声を荒らげてしまっただろう。










すると母親はやはり




「私も仕事があるからねぇ…どうしようかね…


ちょっと職場に聞いてみるね」


と、言って電話を切った。






そしてまた電話がかかってくる。






「お母さん?どうするの?

私一人でも行くけど。」と言うと





「私も行く。」と母親が言う。






(良かった)と思う気持ちと同時に


涙が溢れてくる。







(良かったな、兄ちゃん。


父親の葬式にも来なかった母親が


お前に会いに行くってさ。と思う)







そして泣き出す私に母親は



「アンタが今しっかりしてないと


ダメだからね。お母さん行くのは


出来ると思うけど色々出来ないからね。


しっかりしてないとダメだよ」


と言われる。










つくづくこの母親である。


が、現実はこうだから仕方ない。








私がやるしかないのだ。




ふぅーっと深呼吸し、


気持ちを整理する。






泣いている場合ではない、


まだ、アイツは生きている。

















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