かなり以前のことになりますが、久米宏が「ニュースステーション」のメインキャストを務めていた番組の中で、南米はベネズエラのカナイマ国立公園にあるギアナ高地を特別番組として生中継した事がありました。霧深い密林に聳え立つ17億年前の地層がそのまま残る数多くのテーブルマウンテン(卓状台地)の屹立する姿は、まさに地球最後の秘境と云われるに相応しいものでした。

 公園内には、標高2810mのロライマ山をはじめアウヤン・テプイ山やチマンタ・テプイ山など標高2000~2800m級のテーブルマウンテンがその威容を誇っておりました。なかでもアウヤン・デプイ山から流れ落ちる978mの世界一の落差を誇る「エンジェルホール」の中継は、私の脳裏に強烈な印象を残したのです。見てはいけないものを見てしまったような衝撃でした。そして、「あまりにもの落差のため、流れ落ちる滝の水は途中で霧となって消える。だから、エンジェルホールには滝壺がありません。」と云うナレーションが、またもや私の脳裏に深く刻みこまれたのです。まさに、『知る悲しみ』の始まりでした。

断崖の高さは1000mにおよび岩肌から幾筋もの滝が流れ落ち、山裾に広がる密林や霧や雲が絶え間なく立ち込める絶壁の生放送を目して以来、「『滝壺のない滝』なんて本当に存在するのだろうか?世界は広い、コナンドイルの書いた『ロストワールド(失われた世界)』の秘境の絶景を、いつか、この目で確かめてみたい」とそんな思いをそっと温めておりました。

「今度はどこに行きたい?」と愚妻に訊かれて、

なぜか私の頭の中にふっと、「ギアナ高地、エンジェルホールの文字」が舞い降りてきたのでありました。

「ギアナ高地」と私は即答したのです。

「えぇ!そんな処に行くの…」と愚かなる夫の妻

昨年、思いもしない病気の治療に暗い鬱々たる思いで1年を過ごした私は、「人間、一寸先は闇と云うではないか。もし行きたい処があって、経済的に可能ならば、体力があるうちに、体力が落ちているならば、気力を振り絞ってでも鍛え直せるうちに行っておくべきではないか。」と云う思いを新たにしたのでした。大変な云い訳に聞こえるかもしれませんが、その時は本気だったのです。