アメリカ合衆国はカリフォルニアでのことです
イギリスから1度日本へ戻ることになり当時の夫が「どうせならアメリカに寄ってユニバーサルスタジオとディズニーランドに行きたい」と言った。
私はテーマパークの賑わいが苦手でモスクワ経由でサッサと帰りたかったが頑固に拒否するほど嫌でもなかったので結局US経由にOKした。
その後2週間滞在するハワイのでホテルの予約は済ませてあったがカリフォルニアは現地で宿泊施設を決めようとなった。
行き当たりばったりで宿を決めると選択肢がやたら高級か激安かにわかれがち
結局、激安のモーテルに宿をとった。
米国は初めてで面白かった
空港で男の人がサッと私たちのスーツケースを持つと5メートルほど運んでくれて親切だなと思ったらニッと笑って手を差し出す。
「あ、チップね」と理解したが両替したばかりでチップに丁度良い細かいお金をまだ持っておらずそのまま告げるとちょっと残念そうに下を向きまたニッと笑って行ってしまった
チップ文化が凄いね、これは気をつけて過ごそうと思った
宿は『スーパーナチュラル』のサムとディーンが泊まるような、もしくは『ベイツモーテル』のような簡素な部屋で疲れたのですぐに眠った
真夜中、私は体が圧迫され苦しくピクリとも動けず目が覚めたもののなかなか目を開けられない。
金縛りにかかってしまった。
やがて頭の中にブルース調のギターの音がびろ〜んびろ〜んと物憂げに響いてきた。
更に左手を強く掴まれ徐々にベッドの外に引っ張られるようになった。
うわっ、これは早く解かないとキツいな
と指先等を必死に動かして金縛りを解く努力をしていると瞼が少し開けられた
手が引っ張られる方向の壁にギターが立て掛けてある
周りは暗いのにギターだけがはっきり見えるのだ。
エレキギターではなく
普通のギターだ
頭の中では相変わらず途切れ途切れにブルース調ギター音が鳴り続け
何だよもう!
ギターの霊?
弾いて欲しいの?
そのうちに体が軽くなりまた眠ってしまった
翌朝、部屋を見回したがどこにもギターは無かった
手首には掴まれた感覚がまだ残っていてキツめの金縛りだったのよと夫に話すと薄気味悪いと身震いしていた
幽霊と言えばイギリスの方が多い様に思うが1度も金縛りにはあわなかったのに。
朝食をとりにモーテル別棟の食堂へ行き
夫が「部屋にギターを置いたりしてますか?」と店員に訊くと
「いいや」と即答される
「…でも、見たのかい?」とお茶目にめくばせしてくる。
他にも見た人がいるのだろうか。
アメリカ人は噂に違わず人懐こくて思わず笑顔になった