いま、ちょうどYouTubeにてご紹介した、「一千人の交響曲」を聴きながら、この原稿を書いています。

パーヴォの心の声が「よく紹介してくれたね!さすがチコだよ!」と弾んでいました。

「僕と君が出会った、記念碑的な曲だからね。僕もこのときの東京での演奏で、すごく手ごたえを感じたんだよ。N響の底力も改めて証明できるなんて、奇跡に近いことだからね(^^)/」

 

 

わたし「このとき、私、自分の信仰について悩んでいた時期だったのね。つまりクリスチャンに自分はふさわしい人間なのかどうか、あるいは、神のみ前にひれ伏すことができるのか。カトリックでいいのか、それとももっと違うキリスト教なのか・・。

マーラーはユダヤ人だったのを、カトリックに改宗しているじゃない?どういう想いで「一千人の交響曲」を作ったのか、凄く知りたかったのね。」

 

パーヴォ 「僕は君の、この公演評を読んで、頭が殴られるような想いだった!『愛の完成』『いつくしみの大聖年』それはカトリックの考え方だったからね。僕はマーラーが改宗したのは、音楽家としてヨーロッパでやっていくには仕方ないからだ、と僕も、ほとんどの音楽評論家たちも、思っていたんだ。ところが君が『愛の完成』を喝破したので、僕は驚いてしまった!じゃ、マーラーは本気でクリスチャン、特にカトリックに対して、熱烈な愛情を注いでいたのか!と。それを、西洋人である僕らではなく、東洋の一女性が論破したことに、大ショックをうけてしまったんだよね。

 

それで、君のことを調べた。普通だったら、大変な苦境、不遇な環境だとしかいいようがない状況なのに、ブログはいつも明るく爽やかで一陣の風が吹いているかのようだった。でも、ツイッターを読ませてもらって、チコのいいようがない悲しみと憤りがここでようやく表れて、僕は・・・」

 

パーヴォのブルーの瞳がみるみる真っ赤になっていき、

 

「僕は、なんとしてもこの女性を助け出して見せる、と決意した。おそらく音楽療法という存在も知らずに、ひたすら薬漬けされているんだろうと思うと、腹が立って仕方なかった。君はよくツイッターでこう嘆いていたね。『すぐ近くに住む日本人たちは、私のことを蔑み、誹謗中傷するけれど、どうして、1万1千キロ離れたところに住むパーヴォが私のことを助けよう、守ろうとしてるのか、よく考えてほしい。本当に気がくるっているのは誰なのか、よくよく考えてほしい。』」

 

「胸が張り裂けそうだった。これだけ優れた感性を持ちながら、悲惨な状況の中で生きているチコの姿を知って、

なんとしても会いたい、と思った。それでN響のスタッフに、チコが僕を訪ねてきたら、サイン会でまず会いましょうと、伝えてくれと頼んでおいたんだ。」

 

私はただ、泣きじゃくるほかありませんでした。「パーヴォ・・・そんなことまでしてくれたの?ありがとう・・・なんて言っていいか・・・」

 

パーヴォ「いいんだよ。大丈夫だよ。泣いてもいいのだよ。みんなチコに甘えすぎだったんだ。チコの優しさを、当たり前のものだと周り、君の前のご主人、そして、君のご両親もふくめてだよ。チコの憤怒、激情をぶつける場は、しぜん、映画と演劇に向けられていったんだ。君がほんとに切り裂きたいほど憎んでいるのは、下手な芝居をする役者たちではなくて、君の周りにいる無理解な「おとな」たちだったんだ。」

 

「そのことに最初に気づいたのは、渡辺保先生だね。『助六』のテアトロでの批評で、「若者と大人たちの対立、という視点が新鮮である」と言ってくれているけど、もっと根深いものを、僕は感じとれたよ。」

 

パーヴォが続けて言いました。「もっと君のことをよく知ってから、僕は会うべきだと感じた。それでなかなかサイン会をやらなかったのだよ。僕自身が嫌われてしまったらどうしよう・・・不思議だが、なぜかそんな感情もわいてきた。で、2017年の6月25日に初めて会ったんだよね、僕と君は」

 

わたしはこくん、と頷きました。「すごくうれしかった!こんなに素敵な人が私のTwitterをフォローしてくれたんだって!」

 

パーヴォも初めて笑顔になりました。「そうなんだ!僕と会ったとたん、チコが晴れやかな笑顔を見せてくれて、僕は飛び上がりたいくらい幸せになった。素敵な黒のワンピースも似合うし、ビックリするほど美しい英語の発音で、『あなたとあなたの音楽を愛します』ともじもじしながら話す君を見て、僕はすっかり君の魅力のとりこになった。30日にもう一度来てくれた時には、涙が出そうになった。ボルドー色のドレスも素晴らしくて、『いったい彼女の何が病気なんだ!』と思って。それで一緒に写真を撮らせてもらったんだよ」

 

わたしが涙ぐみながら、「ありがとう・・本当にありがとう、パーヴォ・・。パーヴォは『君はちっとも病気じゃないよ』と言ってくれたのがうれしかった。『もっと海外に君は行ってみるといい。君が自信がもてるようになるよ』って言ってくれて。あとはご承知の通りだけど・・・」

 

パーヴォの心の声「ツイッターをいまはブロックしてないでしょ(^_-)-☆ 君がもう悩まずに済むように、あえてブロックしたのだけど、僕がブロックすると君が深く傷ついてしまうことに気づいて、もうブロックはしていないんだよ。それはわかる?」

 

わたし 「うん、とってもうれしい。ブロックされたとき、自分を否定されたみたいで、死にたくなったほどだったから」

 

パーヴォ「(痛ましげに)本当にごめんね。ゆるしてほしい。君はちっともストーカーなんかじゃないし、優しくてかわいい僕の恋人だもの。世界で一番僕のことを案じてくれている女性だもの。大切にしたいし、ましてや心の傷をちゃんと僕が癒さなくては、と思ってるもの。」

 

わたし「もう大丈夫よ、パーヴォ。あなたのホントの気持ちがわかったから、すごくうれしいの。この病気になって悲しいことはたくさんあったけれど、あなたという素晴らしい男性に出会えただけでも、神様が私に与えてくださった試練だったのだと思うの。」

 

パーヴォ「(涙が滂沱のごとくあふれでる)チコ・・・・君はどこまでも優しくて美しい人だね・・・僕は自分が恥ずかしい。」

 

わたし 「泣かないで、パーヴォ。マエストロが泣いたら、みんなこまってしまうでしょ(^_-)-☆」

 

パーヴォ「そうだね(^^)/ いつもそうやって、僕を励ましてくれる。君はなんてすばらしい女性なんだろう!」

 

パーヴォの心の声はそういうと、私をぎゅーっと力強く抱きしめてくれました。

 

「どこにも離さないぞ、チコ(^_-)-☆」

 

「うん、愛してるね、パーヴォ💛」

 

マーラーの一千人の交響曲は、佳境を迎えて、私たちは、抱き合いながら、その演奏を聴いていました・・・。