失業者はなぜ生まれるのか | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

「ざっと学べる本」に不況の時に非自発的な失業がなぜ存在するのかの説明がある。P141『国民所得が決まると、それに対応する雇用量も決ま』るからだそうだ。そして不況になって国民所得が下がっても賃金には下方硬直性があるために賃金がさがらず、雇用が減ることになるとなっている。この話はもっともらしく、読んでなるほどと思う人もいるかもしれない。しかしモデルとして完全に誤っているのだ。

経営者は、得た利益の範囲で賃金を分配するわけではない。ある価格で予想される売上の量を生産できる最小限の人数を最低限の賃金で雇うだけなのである(賃金の上昇で雇用量が減るという現象は観察されないが、正しいモデルで考えれば当然である)。そうすると国民所得よりずっと小さな賃金しか払われないと(もしそうなら国民所得は常に縮小に向かうだろう)勘違いしてしまうかもしれないが、国民所得は企業が借金しておこなった設備投資や、国の支出も含まれ、また賃金は企業が借金をして払われることだって少なくないのだから、以前より多くの賃金が払われるということはありえる。
要するに、借金を軸にした経済の循環が上手くいけば、有効需要は適切に膨らむ(そして国民所得も膨らむ)ということである。

なお賃金の下方硬直性というのも嘘だ。労働者はサラリーマンだけでない。個人で商売している人間は少なくなく、不況で売上が減ることは収入を激減させるだろう。サラリーマンの場合も、仕事の生産性はわずかながら常に上昇している。同じ時間働けば当然生産量が増大している。これに対して賃金が増えなければ実質賃下げと変わらない。100人でする仕事が99人でできるようになれば、一人の失業者が生まれ、全体としてその分の賃金は減るのである。そして減った分の賃金は利益の増加としてレント等に組み入れられるだろう。利益を増やした層も消費はするが、その率が悪いので有効需要が縮小する。


生産者は、コストに利益を上乗せして価格を決めると同時に、今までの売れ行きなどから売れる量を予想して生産します。その生産量に必要な最小限の人数を最低限の賃金で雇うというのが正しいモデルです。賃金の上昇によって雇用量は減少しません。これは現実で確認されています。

モノを買うにはお金が必要ですが、モノが売れた代金の一部が消費者の収入になって、さらにその一部でモノを買うということになると、循環はどんどん小さくなっていくことになって成り立ちません。そこで重要になってくるのがお金の借り入れです。企業がお金を借りて設備投資をしたり、国が支出したり、また雇い主は売り上げを精算する前に借入金で賃金を払ったりします。借り入れのおかげで大きくなった需要は売り上げを大きくして賃金も増やし、その結果経済は上手く循環するようになります。そして経済は成長もします。

国や企業がしている借り入れによって上乗せされた可処分所得によって、有効需要は決まってきます。従って消費者の収入が減少すれば、当然有効需要は減少します。それはすなわち、必要な雇用量の減少ですから、(ワークシェアリングしない限りは)失業者が生じることになります。時に見かける賃金が安くなった方が失業が減るのでよいなどという主張は、全くの勘違いです。
他にも、得た収入を全て使う必要のない富裕層への分配の比率が増えることも有効需要を減らすでしょう。企業の借り入れが少なくなるのも、有効需要を減らす大きな要因です。内部留保などはとんでもない話です。金利の上昇ももちろん大きなブレーキになります。
消費税もいかに大きなマイナスであるか分かると思います。可処分所得の面だけでなく、分配の面でも最悪です。

有効需要があっても、生産能力が足りなかったり、人が足りなくなることも、もちろんありえることではあります。ただし、ここで気をつけなくてはいけないことは、目先の不足に騙されてはいけないということです。需要が低迷していてそれに応じた技能者の数になっていた業界で、需要が復活すれば急には対応できず、人員不足になるでしょう。きつく賃金も易い業種であれば、そのための技術を習得しようとする人間は生まれてきません。それを見て、不足だなどと言ってはいけないでしょう。雇用量の増大が結局ワークシェアリングの結果で、総賃金は増えていないなどというようなことになっていないか注視する必要もあるでしょう。