超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。なぜ夫妻は死んだのか?それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか?切なさに満ちた、著者初の純愛ミステリー。


野口夫妻の死体の発見現場に居合わせた4人がそれぞれ証言をするのが第一章、二章から五章では4人それぞれの視点で物語が進みます。一章でのそれぞれの言い分に矛盾はないのですが、その後の各章で語られる独白には過去のトラウマや隠していた思惑が明らかになっていきます。


小さく閉鎖的な島の老舗料亭に生まれたものの経営難からの没落を経験し、現在は有名レストランで働く成瀬・母親から受けていた虐待行為を愛ゆえのものであったと昇華させるべく、同様のシュチュエーションの小説執筆に勤しむ西崎・成瀬の高校の同級生であり、ある日新しく女を作った父親から母親と弟と共に家を追い出された過去を持つ希美・西崎、希美と同じボロアパートに住みつつも、広い世界に出て活躍しようと機会を伺っている野心家の望。そして暴力で妻を縛る夫と、束縛を愛と信じる妻の歪な関係であった野口夫妻。


それぞれのNがNを守るために嘘をついています。そして主要人物ではないけど全てのきっかけを作ってしまった野バラ荘の買収阻止計画もオーナー野原さんのためでしたね。Nじゃん・・・てなりました。


読んでいるうちに頭の中の霧が晴れていくようでもあり深まっていくようでもある印象。希美が想うNが一人だけだと思っているとよくわからなくなるかも。母親を反面教師にして自立した女性を目指す分、恋愛に奥手というか一人と深い関係になるのを恐れているから、みんなのために少しずつ動いたのかな。


事件は4人の供述通り表向きにはすんなり解決してるんだけど、真相にはめちゃくちゃ複雑な思いが隠されてるのが面白いです。起こった事実は確かに一つだけど、そこに至るまでの経緯だったり事を起こした思惑だったり、真実は事件に関わった人の数だけあるのかもと思いました。コナンくんも真っ青よな。