何故、お前が死刑囚に。教誨師の高輪顕真が拘置所で出会った男、関根要一。かつて、雪山で遭難した彼を命懸けで救ってくれた友だ。本当に彼が殺人を犯したのか。調べるほど浮かび上がる不可解な謎。無実の罪で絞首台に向かう友が、護りたいものとはーー。無情にも迫る死刑執行の刻、教誨師の執念は友の魂を救えるか。急転直下の"大どんでん返し"に驚愕必至。究極のタイムリミット・サスペンス。


教誨師として囚人たちに仏道の教えを説く浄土真宗の僧侶・顕真は、拘置所で命の恩人である関根と再会します。身体的特徴を嗤われ衝動的に若いカップルを刺殺したとして確定死刑囚になっていた関根に、そんなことをする人間ではないと疑念を抱き、かつての事件を担当した刑事と再捜査をすることに。冤罪の疑いが浮上しますが当の本人が何かを護るために死刑を望んでいるようで執行が迫ります。


お坊さんが探偵役を務める異色のミステリーで面白かったです。友人の冤罪を晴らすために教誨師という立場であることを利用して大越権行為を行うお坊さん、人間くさくてむしろ好きだな。しかも関根はそんなこと望んでなくて完全に自己満足だし、それを隠そうともせず奔走する様子は応援したくなります。刑務官の田所をはじめ、周りの人も顕真の無茶を見逃してあげていて人徳だなぁ、いやお坊さんに徳とか言うのは失礼か。


大暴れしてる顕真ですが、関根と向き合う中で罪と教誨について、また宗教家の役割について自分は本当にこれでいいのだろうかと葛藤する姿も見どころです。ラスト逃げることを許さない厳しくも優しいの門主の言葉が深かったな。


最終章の展開は少し都合がよすぎる気もしたけど、顕真と関根が協力して時間稼ぎをするシーンには胸が熱くなりました。