ホテル・コルテシア大阪で働く山岸尚美は、ある客たちの仮面に気づく。一方、東京で発生した殺人事件の捜査にあたる新田浩介は、一人の男に目をつけた。事件の夜、男は大阪にいたと主張するが、なぜかホテル名をいわない。殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのか。お客さまの仮面を守り抜くのが彼女の仕事なら、犯人の仮面を暴くのが彼の職務。二人が出会う前の、それぞれの物語。


マスカレード・ホテルで共闘した主人公コンビである新田と尚美が出会う前の前日譚です。二人の新人時代も含めたそれぞれのストーリーや前作で触れられていた台詞や場面に関するエピソードも明かされており、とても面白かったです。こういうのシリーズのファンには嬉しいですよね。お互い気付かない間に絶妙に交錯している私得のシチュもありがたいわ。新田が自分で大阪に行けば尚美に会えたのに〜とニヤニヤしちゃいました。


前作では完璧に指導係を務めた尚美が、そこそこ口汚い心の声で客に不満を抱いている描写があり、びっくりしたと同時に微笑ましかったです。親近感湧いちゃうわ。新人時代の新田もさらに生意気で、あれでも丸くなってたのかぁと思いました。久我や本宮など脇を固めていたキャラクターも登場し、人物像に深みが増した気がします。


顔出しをしていない人気女流作家の真の姿、夫を殺されて悲しみに暮れながらも気丈に振る舞う妻の裏の顔、一流ホテルマンの商売人としての一面などなど、『仮面』が強調されていると感じました。マスカレード・ホテルで「どんなに粗末でもその仮面をはずしてはならない」と考える尚美と「仮面には二度とだまされない」と考える新田が構成される過程が見られます。


刊行順で読んでももちろん面白かったし、時系列でこちらから読んでも楽しめそうです。