人気球団オリオールズの投手・沢村。ある日、沢村の「暴力団との癒着」と「八百長試合」を指摘した告発文書が球団とマスコミに送りつけられ、身に覚えがないにもかかわらず、沢村は自宅謹慎処分を受けてしまう。自身の潔白を証明するため、告発文書の調査を開始する沢村。やがて彼がたどり着いたのは周到に計算された恐ろしい陰謀だった!第3回『このミス』大賞を受賞した正統派ハードボイルドがついに文庫化!


主人公であり語り手はプロ二年目の新人サウスポー投手の沢村。野球は高校までで辞めるつもりだったものの、友人の頼みで三年生から六大学野球最弱校のエースを務め、その後はアメリカに留学、大学リーグで投げていたところを監督に発掘され入団という異例の経歴を持つ選手です。クレバーで飄々とした沢村は、古い体質が抜けないチームの中では浮いた存在となっています。


実力があって認められているのに、地位や権力に固執せず己の道を行く異端児系のキャラ大好きすぎる。人によってはちょっと性格がハナにつく部分が多いかもしれないですね。でも激しく怒ることはないけれどめげることもなく、二軍に落とされても変わらず練習をし、その合間に一人で調査をし、読んでいるうちに沢村なりの野球への愛情が伝わってきて、最後のぼろぼろになりながら投球する場面では応援せざるを得なくなると思います。


オリオールズは一応架空の球団なんだけど、新聞社が経営してるとか、監督が野生の勘で采配するとか、ワンマンなオーナーとか明らかに某人気球団を大胆にモデルにしていて笑っちゃいました。攻めますね。


ミステリーですがかなりしっかり野球小説でもあるので、専門的な知識はいらないにせよ野球の基礎知識とか野球界の背景とかわかっていると面白みが倍増すると思います。