【小説「ラギ」第31話あらすじ】
前期試験も間近に迫ったある日、完全にやる気を失っている一縷に、舞は妄想話をして笑わせるが……
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31日目に現れたのは、Tシャツにジーンズ姿なのにどこか垢ぬけた感じの、左腕の高級腕時計を雑に扱うような、そんな若者だった。話しぶりも自信満々で、なんならここ貸し切るよ、くらいの勢いだ。
「Donna Summer」…… ある意味嵌ってるよ。
「あっ、僕は《まい》って子が妄想するお話の中に登場する「青年実業家」ってやつで、名前もなきゃセリフもなし。だからお構いなく。そうやって人に気を遣われるのって好きじゃないんだよね」
「僕? 会社経営してるよ。詳しいことは言えないけど、自動運転に関するシステム絡みだね。今はそれでしょ。もう遅いくらいだよ」
「僕がバレリーナを見初めたって? 冗談でしょ? そりゃさ、その子が石原さとみ似なら考えなくもないけどさ。どうなの? その子。さとみちゃんに似てる?
…… なるほど、このバレリーナね。細いねぇ~~~ バレリーナだから仕方ないのか…… じゃあ、引退したら付き合うよ。美人だもん」
「だから、僕はこの子の妄想の中の登場人物なの! しかも、恋人の当て馬なんだってさ、アハハだよね。普通、誰が考えても僕の方を選ぶでしょ? だって顔は小栗旬だし、お金持ちだし。それをフルなんて、妄想でもあり得ないよね」
「でもこういう子、好きだなぁ。物語を作ってしまう子。ウェブ小説のサイトに作品上げてる子にはやっぱり妄想系のお話好きな子が多くて、それを呼んでると楽しくなるよね。僕は現実からちょっとだけ浮遊した物語が好きなんだけど、際どい物語描く作家さんでも、とてつもなく芸術的な文章書く人もいるよ。一度読んでご覧、嵌るから。音楽はインディーズ、って人なら、共通する楽しみを見出せるかもよ」
ベンチャーの成功者ってのは、なんにしても早物買いなんだな、と思わせる発言をしていたが、結局ジュークボックスがやたらと気に入ったあたり、彼も宇宙人じゃないことだけはわかった。
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