タイタニック、20世紀初頭に建造された豪華客船。1912年4月14日の深夜に氷山に接触し、翌日未明にかけて沈没してしまいました。乗員乗客1,513人が犠牲となり、当時世界最悪の海難事故となりました。その後、映画化もされ世界的にその名を知られています。ではなぜ、船は沈むのでしょう。そしてなぜ、船は浮くのでしょう?
それにはアルキメデスが発見した原理が関係しています。その原理とは


液体の中に沈んだ物体は、その物体が押しのけた液体の重さに等しい浮力を、重力と反対向きに受ける。


というものです。アルキメデスがこの原理を発見したわけですが、どのように発見したのでしょう。古代ギリシャのシラクサという国の国王ヒエロンが、本来純金製である王冠に銀が混ぜていないかを確かめるために、アルキメデスにその確かめる方法を見つけさせたのです。

ある日、アルキメデスはお湯をいっぱいに入れたお風呂につかりました。そのとき身体を湯船に入れるにつれてお湯が湯船からあふれ、同時に身体が軽くなることに気付いたのです。つまり、自分の押しのけたお湯の分だけ身体が軽くなるのです。これを金と銀の判定方法に使いました。金は銀より重いので同じ重さの金と銀を比べると、銀の方が体積が大きくなります。だから、王冠に銀が混じっていればそれだけ多くの体積のお湯が湯船からあふれ出してしまうのです。

この原理を利用して重い鉄の船も水の上に浮いていられるのです。水中に沈んでいる船体部分が押しのけた水の分の浮力によって重さが相殺され、浮いていられるのです。だからタイタニックのように、氷山に接触し船壁に穴が開いてしまうと、そこから水が入ってきてしまい、浮力がなくなり、船が沈んでしまう…そんなわけなんですね。

為替相場って知っていますよね?為替相場とは、通常の外国為替の取引においての外貨との交換比率(交換レート)のことを言います。現在は1ドル=100円位で推移していますね。

この為替相場、現在は変動相場制によって日々動いていて、1つに決まっていませんね。為替レートを外国為替市場における外貨の需要と供給の関係に任せて自由に決める制度で、現在の経済はこれによって動いています。
でも1970年まではドルと円は固定相場制だったでしたね。歴史の授業でもやっていたかと思います。当時は、1ドル=360円で固定されていました。しかしこれはどのように決めたのでしょうか?

実はとてもいいかげんに決めてしまったのです。日本の通貨の単位は言わずも知れた「円」。「円」を英語にすると・・・「circle」。では円の角度は何度でしたか?360度ですね。だから、1ドル=360円!本当かどうか、ちょっと信じがたいですがこんな決め方で相場を決めてしまったんです。経済原理をまったく無視したなんともいいかげんな決め方。当時は日本がこんなに経済大国になるなんて想像もつかなかったのでしょう。単なる東洋の島国…でも今はこんなにも社会が発展し、アメリカに勝るとも劣らない大国に。ついに固定相場制では維持できなくなり、1976年1月にジャマイカのキングストンで開催されたIMF暫定委員会で変動相場制が承認されました。これをキングストン体制と呼びましたね。そして今に至る、というわけです。

経済と数学が関係している?いや円が360度ってことだけで決めてしまった。そんなこともあるんですね。

今回のお薦め本

人に話したくなる物理 身近な10話

2007年9月25日 初版第1刷発行
著 者 江馬 一弘
発行所 丸善株式会社



❀ どんな本


「どうして電子レンジでものが温まるの?」
「台風の渦がいつも同じ方向に巻いているのはなぜ?」
「地球が直径1cmだとすると,太陽との距離はどれくらい?」
などなど、身近な疑問を解決してくれるような本です。たくさんのイラストとわかりやすい会話形式で、楽しく読める、そんな1冊です。身近な現象だけど、その原理が分からない。そんな身近な、けれども奥が深い内容です。


❀ 著者はどんな人


江馬 一弘(えま かずひろ)

 現在は、上智大学理工学部物理学科教授をされています。1961年に静岡県に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院工学系研究科中退、工学博士、東京大学助手・講師を経て現職につかれています。専門分野は光物性、非線形工学、超高速光エレクトロニクスです。ちょっと難しいですね…

 でもこの先生の授業はとても面白いんです。難しい現象を分かりやすく、しかも優しく教えてくれます。なので、この方の書いた本はとても分かりやすいんです。ちなみに私が大学時代教わっていたのが江馬先生なんです。そんな縁もあり、この本を紹介しました!



❀ 本の形式


単行本: 168ページ
出版社: 丸善 (2006/9/29)
ISBN-10: 4621077503
ISBN-13: 978-4621077504
発売日: 2006/9/29
商品の寸法: 19 x 13 x 1.2 cm

どこの家庭でもある冷蔵庫。

食料品などを冷やしていますよね。


では一体どのように冷やしているのでしょうか?

身近なものだけど、考えたことはあまりないですね。

実は冷蔵庫とは「気化熱」というものを利用して冷やしているんです。

ということで先に、「気化熱」についてお話しましょう。

物質の三態ってもう授業でやりましたよね?

固体・液体・気体のことです。

気化熱とは、液体から気体に変わるときに奪う熱のことを言います。


たとえば、少し寒い日にプールに入ったとき、外に出るとどう感じるでしょう。

水の中にいるときは平気なのに、水から上がると寒く感じませんか?

これが気化熱なんです。


体の表面から水が蒸発するときに、一緒に熱も奪ってしまう。

だから寒く感じる。


他にも、夏の暑い日に地面に打ち水をするのも同じ理由からです。

気化熱を利用して地面の温度を下げているんですね。

だから生ぬるい水をまいても、涼しく感じることができるんです。


さてここまで水の話をしてきましたが、気化熱はどんな液体でも、

気体に変わるときに熱を奪います。

そして、その気化熱の大きさや蒸発のしやすさは物質によって異なります。


例えばアルコールは水よりも蒸発しやすくて、奪う熱量も大きいです。

だから注射される前にアルコール消毒をされると、すごく冷たく感じるんですね。


では話を冷蔵庫に戻しましょう。

冷蔵庫も基本的には、この気化熱によって冷却しています。

そこで使われているのがフロン。

このフロンはオゾン層破壊などで聞いたことがあると思います。

フロンは常温では気体ですが、無理やり液体にすると、

気体に戻るときに多くの気化熱を奪います。

だから、まわりを冷やす効果が非常に高いのです。

しかも、無臭・不燃性など扱いやすい気体なんです。

しかし、フロンはよいことばかりではないんです。

無臭・不燃など化学的に安定という性質を持っていますが、

この安定性がゆえに、それが落とし穴になっているんです。

安定ということは分解されないということです。


分解されないまま大気の上にまで上昇していき、オゾン層まで到達します。

オゾン層は太陽の強い紫外線から私たちを守ってくれる層のことを言います。

フロンはこのオゾン層を破壊しながら進むのです。


だから問題になっているのです。
便利だからと言ってフロンを使いすぎると環境破壊につながってしまうんですね。

利便性と環境問題…切っても切れない関係です。


他にも便利なものを使うときには、それが他にどんな影響を及ぼしているのか、

それを考えることが大事なのではないでしょうか?

 「黄金比」という言葉を耳にしたことはありますか?

これはもっとも美しいと言われている比率なんです。

具体的には黄金比の値は、二次方程式 の正の解として表されます。

これを解くと、 近似値は として求められます。

でも、これだとなんだか分かりませんよね。

そこで具体例をいくつか挙げてみましょう。


 まず、ギリシャのパルテノン神殿の長さと高さの比がこの黄金比になっています。

他にも、ピラミッドの底面の一辺の高さの比や、ミロのビーナス、

レオナルド・ダ・ビンチが描いた人体図も約1対1.6で、黄金比になっています。このように世界的に有名、美しいとされているものが、

約1:1.6(約5:8)という比率になっているのです。




ヨーロッパでは、昔から黄金比の長方形がもっとも美しいとされています。

歴史的に見ると、15世紀のイタリアの数学者パチョリは


「黄金比は言葉では限定しがたく、神によって授けられたものである」


と言っています。

だから例えば好きな芸能人や好きな車種などは、

どこかが黄金比になっているのではないでしょうか?

美しいと思う顔などは目と鼻と口の比率が5:8になっていたりとか…


なので、皆さんが絵を描いたり、写真を撮ったりするときは、

この黄金比を意識してあげると、美しい絵や写真に仕上がるのではないでしょうか?

ちなみに黄金比は、ありとあらゆるところに存在しています。

他にも調べてみると面白いですよ。

今回は、「シュレディンガーの猫」というお話をしたいと思います。
量子力学という物理の一分野のお話です。
非常に高度な数学を使用しますが、今回はそのようなものは使わず、
できるだけ簡単に説明したいと思います。


まず量子力学とは、電子、原子核などの間の微視的現象をも説明する物理学の理論のことです。
つまり、非常にミクロな世界を記述する学問なのです。


では本題の「シュレディンガーの猫」の実験ですが、
あくまでこれは例ですので、残酷とか言わないでくださいね。



思考実験の内容


まず、蓋のある箱を用意します。
この中に猫を一匹入れます。
箱の中には他に、放射性物質のラジウム、粒子検出器、青酸ガスの発生装置を入れておきます。
もし箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、これを検出器が感知し、
その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、猫は死にます。

しかし、アルファ粒子が出なければ検出器は作動せず、猫は生き残ります。
重要なのは、この実験において、
ある時間内にラジウムがアルファ粒子を出すかどうかは完全に確率の問題ということです。

仮に1時間でアルファ粒子が出る確率が50%だとして、この箱の蓋を閉めて1時間放置したとします。
1時間後、猫は生きているでしょうか。
それとも死んでいるでしょうか。
蓋を開ける前は、生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせなのでしょうか。



これが「シュレディンガーの猫」の実験内容です。

この問に対する解釈の仕方は大きく分けて2通りあります。それは


一般的な解釈
 「シュレーディンガーの猫」は観測者が観測するまで(観測者にとって)、
”生きている猫”と”死んでいる猫”の重ね合わせの状態にある。観測者が観測する過程で(観測者にとって)、猫の状態はどちらか一方に定まる。


多世界解釈
 「シュレーディンガーの猫」のいる世界は、”猫が生きている世界”と”猫が死んでいる世界”に分かれる。


当然、”猫が生きている世界”にいった観測者は猫が生きていると観測し、
”猫が死んでいる世界”にいった観測者は猫が死んでいると観測する。
もちろん、観測者は、猫を観測するまで自分がどちらの世界にいたのか知ることは出来ない。


ちょっと難しい?いや哲学的ですかね?でもれっきとした科学の分野なのです。


でもなにかおかしくはありませんか?
まず、一般的解釈ですが、人間のような意識を持った観測者が猫を観測すると、それまでは“生”状態と“死”状態の和だった猫の状態が、生か死のいずれか一方に瞬間的に変化する、ということですよね。
人間が観測するまで、ある事象が決定しないということです。

逆にいうと、人間が箱を開けて中身を見るまで、猫が生きている状態と、
猫が死んでいる状態が「同時に」存在しているということです。

たしかに、人間が箱を開けて猫がどうなっているかを見るまで、
猫は生きていると同時に死んでいたと考えるのは、いかにも奇怪です。
それに、猫だって意識を持っているはずでよね。
もっとも、猫の代わりに、昆虫やミジンコやバクテリアを使ったら、どうなるのでしょう?


哲学的だなぁ、と思うのは私だけでしょうか?この話を聞いて、
「当たり前じゃん」という人と、「へ~」という人と2通りの人がいると思います。
しかも、すぐには理解しにくい話なので、何度も考えてみてください。
まさに「神のみぞ知る」ではなく、「人間(観測者)のみぞ知る」と言ったところでしょうか。


次に、多世界解釈の疑問点。これはもう、「パラレルワールド」ですね!
なぜならば、猫が生きている世界と死んでいる世界が、同じ時空間内部に併存するというSF的な解釈が「多世界解釈」であるからです。
この考え方は、ド・ウィットやウィーラーといった“大物”物理学者に支持されたこともあって、一時期はかなり関心を集めました。
しかし、事が猫の生死にとどまらず、「第二次大戦でヒトラーが勝利した世界」や「ナポレオンが子供の頃に事故死した世界」など、さまざまなパラレル・ワールドを認めなければならないことから、あまりに非現実的ですよね。
いくつも「世界」が存在してしまうからです。


こうみると、物理も楽しくないですか?



最後に。


あなたが、好きな人に告白しようとする。
もしくは、就職先に面接を受けに行った。
何でも良いです。
結果は、2つに1つ。
これは、まさに「シュレディンガーの猫」と同じ「量子力学」の話なのです。
「成功」か「失敗」か、観測(実行)するまでは、両方の重ね合わせの状態であ

り、両方の世界が存在する。
分かるのは、観測(実行)したときのみ。

しなければ、いつまでもあやふやな、重ね合わせの状態のままです。
もし、パラレルワールドが存在するならば、そんな不確定なものではなく、
あなたにとって「いちばんよいせかい」にしたいですね!



結果は、「人間(観測者、実行者)のみぞ知る」です!

紙面でお送りしたROOKIES NO.4。

そこでのおもしろ問題の解答をアップしておきました。


よ~く見ると、何かを嗅ぎ回るダルメシアン犬と、
岩の上にとまったワシが見えませんでしたか?

でもそこには影や模様がたくさんあって、見えるのを邪魔していますね。



ちびまめの数学科通信『ROOKIES』

そこで邪魔なものを消してみましょう。




すると・・・




ダルメシアンとワシが浮かび上がってきました!




ちびまめの数学科通信『ROOKIES』



実はこの写真は、R.C.ジェームスという人により撮影され、
著名な視覚研究者であるR.グレゴリーやD.マーにより執筆された教科書に掲載されています。

興味のある人は是非調べてみてください。



インターネットで「錯視」と検索すれば他のもたくさん出てきますよ。





今回の質問は2-4ら出た質問で

「吸収した光はどうなるのか?」

ということです。


授業中に「ものの見える原理」についてお話したことを覚えていますか?

少しだけ復習すると、ものが見えるということは



1 そのもの自体が光っている


  例えば、太陽・蛍光灯・白熱灯など


2 反射した光を見ている



の2通りしかありませんでしたね。


たとえば、植物の緑色の葉は、光源からの白色光のうち

緑色以外の光を吸収し、緑色だけを反射しているので、緑色に見えるのです。


同じようにいちごが赤いのは、赤色以外の光を吸収し

赤色だけを反射しているので、赤色に見えるということです。


他に透明なもの、ビニール等はどうでしょう?

ビニールは向こう側が透けて見えますね。

ということは光は透過してしまっているということです。


ここで光がものに当たったときの現象をまとめてみると


1 吸収

2 反射

3 透過


の3つしかないということです。




それでは本題。


「吸収された光はどうなるのか?」


いちばん簡単な例で考えてみましょう。

たとえば、緑色の葉の場合。

吸収された光のエネルギーは「光合成」に使われています。

つまり、光のエネルギーを使って、

二酸化炭素と水から炭水化物を合成し、酸素を放出します。


通常の場合はどうなるか?

それは物質に吸収された光のエネルギーは、物体の温度を上げるのに使われます。


晴れた日に手のひらを太陽にかざしてみてください。

温かく感じませんか?

それは太陽の光のエネルギーを手が吸収しているからです。


以上が、ものの見える原理(反射・透過・吸収)になります。


素朴な疑問こそ大事です。


とてもよい質問でした!






ちびまめの数学科通信『ROOKIES』