北海道のセミの季節は、エゾハルゼミから始まる。
五月の連休前後、緑が濃くなってくる頃。朝目覚めると、山の方からセミの合唱が聞こえてくる。
洗濯物を干しながら、「ああ、夏が始まるんだなあ」としみじみするのが恒例だ。
遠くの山から聞こえてくるセミの合唱も好きだけれど、山の中を散策している時に、蝉時雨の中で汗を流しながら歩き回るのも楽しい。
エゾハルゼミの鳴き声は特徴的で、ミョー……という鳴き出しを何度か繰り返してから、キキキキキ……と甲高い連続した声をあげる。よくネットで「蛙のような鳴き声」と表現されていることがある。
札幌圏のカエルと言えば、ニホンアマガエルのゲゲゲゲゲ……(見た目の可愛らしさに反して鳴き声は可愛くない)か、エゾアカガエルのキュロロロロ……(見た目に反した可愛らしい鳴き声)のどちらかだ。だから私にとってエゾハルの鳴き声には「蛙」という印象は無い。
因みにエゾアカガエルは四月後半から五月の連休辺りにかけて日中に鳴く。アマガエルと違って、繁殖期は春先の年に一回だけ。この時期にしか聞くことができない、春の鳴き声だ。
順番で言うと、エゾアカガエルが先でエゾハルゼミが少し後になる。山の場合は標高が低いところから高いところに順番に始まる。
エゾハルゼミは夏のセミと比べるとかなり小さく、木の幹で見つける抜け殻の色も淡い。何となく儚げな印象を与える。しかし、鳴き声は間近で聞くと力強い。おまけに鳴き出しのミョー……をしつこく繰り返して先に進まないので、ちょっとイライラすることもある。
エゾアカガエルやエゾハルゼミの鳴き声が聞こえなくなり、いよいよ夏も本格的になる頃、エゾゼミたちが現れる。 「エゾゼミたち」というのは、似たような模様のセミが三種類いるから。それぞれエゾゼミ、アカエゾゼミ、コエゾゼミがいる。
エゾゼミとアカエゾゼミは鳴きだす季節がほぼ同じで、体の模様もよく似ている。大きさも同じくらい。両者は色が違うのですぐに区別できる。
アカエゾは名前の通り赤、というよりも全体がオレンジ色。本当は細かい違いもあるのだけれど、色を見ればすぐに分かるので初心者にも識別が簡単だ。コエゾゼミは一見エゾゼミとそっくりだけれど、一回りサイズが小さい。胸部の模様もちょっと違う。特に胸部の縁を囲む黄色いラインが一部途切れているので、そこさえ分かればすぐに見分ける事ができる。
エゾゼミは針葉樹の木々が多い場所でよく見かける。アカエゾゼミは広葉樹の多い場所にいる。コエゾゼミはこだわりなくどちらにもいるような気がするが、正直よく分からない。
鳴き声はコエゾとアカエゾがよく似ていて、両者の区別を鳴き声でしろと言われると、ちょっと迷ってしまう。文字にすると、どちらもジー……だ。コエゾの方が高いような気がするけれども、単独だと区別が難しい。エゾゼミの方は、もう少し鳴き声がビリビリとリズミカルに響くような気がする。
札幌圏で見かけるのは圧倒的にエゾゼミが多い……と、言いたいところだけれども年によって変動が大きいように思われる。私個人としては、エゾゼミの方がコエゾゼミよりも多い印象がある。アカエゾは全然見かけない年もあれば、やたらとその辺に落ちている年もある。セミというのは基本的に年による変動が大きい虫なので、そんな印象を抱くのかもしれない。
他に札幌圏のセミとしてはアブラゼミとミンミンゼミ、ヒグラシがいる。近年アブラゼミとミンミンゼミが増えているような気がするが、これもあくまで「気がする」なので専門家の意見は違うかもしれない。ヒグラシは偶に鳴き声を聞くくらいであまりメジャーではない、と思う
7月の半ばから始まるセミの季節は9月に入ると下火に入る。ここ数年は暑い日が続くので9月の半ばごろまで鳴いている。それでも朝晩が涼しい、というよりも寒いと感じる時期にはいつの間にか途絶えている。
その頃にはコオロギや邯鄲が鳴きだしていて、季節は秋に移り変わっていく。








