『怖い絵3』の感想です。
 
 
表紙はフュースリ『夢魔』
この夢魔、私はおちゃめな気がするのだけど、
文中では「醜」「悪」とひどい言われよう(笑)
 
 
★作品1 ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生  》
ウフィツィ美術館で見た。
 
 
★作品3 伝レーニ《 ベアトリーチェ・チェンチ 》
この本で初めて見た。
薄幸の美少女。
 
 
★作品4 ヨルダーンス《豆の王様》
ウィーン美術史美術館には行ったけど、見た記憶はない。
(作品5 ルーベンス《 メデューサの首》も)
 
貧しい人がワインを飲んでいる絵を見る度に、
なぜ高級品に思えるワインを買うお金があるのかと
不思議に思っていたが、
この本にその説明が載っていた。
 
「ワインは現代のような嗜好品ではなく、
生水の乏しい地域の水代わりであり、
栄養補助飲料だったから子供も飲んだのだ。」
 
そうなると今度は
「子供が飲んで大丈夫なの?」と疑問に。

するとタイムリーなことに、
これを読んだ翌日のTV番組「その差って何ですか?」で、
ピケットと言われる昔、飲まれていたワインが出てきた。
これはブドウの搾りかすに水を加えて搾ったものらしい。
ピケットはアルコール度数が低く、子供でも酔わないそう。
 
 
★作品9 ミケランジェロ《 聖家族》
ウフィツィ美術館で見た。
 
ヨセフは「世界最初の寝取られ夫」やP118の最初の方など、
酷い言われよう(笑)
 
 
★作品11 ゴヤ《マドリッド、一八〇八年五月三日》
プラド美術館で見た。
 
ルーヴル美術館にあるゴヤの書いた肖像画と
プラド美術館にあるゴヤの絵が同じ人が描いた絵と思えず、
調べたことがあった。
 
画家に何があったかは他の本でも読んだけれど、
この本で当時のスペインの状態がよく分かった。
 
『怖い絵展』で、
この本に載っている《 死体を相手に何たる武勇》があった。
大きな作品でなく、
小さな作品で大げさに書かれていないことから
逆にこのような蛮行が至る所で行われていたのだろうかと思うと、恐ろしい。
描く絵ががらりと変わるほど、凄まじいものを見て、
感じたんだと思う。
 
 
★作品12 レッグレイヴ《 かわいそうな先生》
感傷的な雰囲気のきれいな絵。
p145の記述に驚いた。
女性はそもそも「職業に就いている」というそれ自体を
蔑まれたの
(「職業に貴賤はない」どころの騒ぎではない」)
 
「怖い絵」シリーズには、昔の女性の置かれている状況が
ところどころに出てくる。
バレリーナ、お針子、モデル、看護師などの職業も
低く見られていたという。
 
職業に就くこともできず、
頼りにする父親や夫など男性の状況1つで、
女性の人生も天から地へというほど変わってしまう。
 
女性の社会進出や問題を、
ただ本で問題として読むだけでなくて、
絵画や映画からを見ていくと、
とっつきやすく、興味が沸く。
 
 
★作品13 
レオナルド・ダ・ヴィンチ聖アンナと聖母子
ルーブル美術館で見た。
「母の上に娘が乗るなんて、
なんでこんな変な姿勢をとっているのだろう」と
思っていたけど、
この本ではフロイトによる、この姿勢でないといけない理由が載っている。
フロイトの手にかかると、全てが性的なところにいくね…。
 
ある仮説によると、アンナの右足の近くには、
胎盤を表す赤い石が描かれているらしい。
この本ではよく分からず…。
この本を読んだ後に、実物を見てみたかった。
 
 
★作品19 アンソール《仮面に囲まれた自画像》
インパクトが強く一度みると忘れられない絵。
派手な色彩の不気味な仮面に囲まれた、端正な顔の自画像。
…と思っていたのに、その自画像ですらルーベンスの仮面を
かぶっているという。
驚き。
 
p236の「しかし長生きはするものだ。」からの文章が好き。
生まれも育ちも成功度も何もかもが違うルーベンスと、
その仮面をかぶった自画像を描いた画家。
 
アンソールは後年、評価されて、
風貌までルーベンスに似てきたという。
この人のようになりたいと思って生きていると、
成功や顔でさえもその人に似てくる可能性があるとしたら、
希望を感じる。
 
 
★作品20 フュースリ《夢魔》
「眠りはある意味、細切れの死だ。」から始まる、
冒頭の文章が好き。
 
p248の文章
パーシー・シェリーは、「恐怖は人間の作りだしたものにすぎない」(略)
一方ジョージ・ゴードン・バイロンはこう言う、
「恐怖は人間がこの世にあらわれる前から存在し、
人間が滅びたあとも残る」。
これでなくてはロマンは語れまい。

戦争のような人間が作り出した恐怖もあると思うけど、
私も恐怖は人間が作り出したものでない、
元々あった別の世界の物と考える方が
ロマンを感じる。
 
普通は人間が見ることできない世界を、
ふとした拍子に、
たまたま誰かが覗いてしまった。
色々な怖さがあると思うけど、
こんな怖さの映画や本が好き。
 
 
★おまけ
作品8の中で出てきた、岸田劉生の《 麗子微笑 》
私の中で怖い絵、NO.2のこの絵。
日本映画のホラーのような
じっとりとしたものを感じます。
 
画家が娘の麗子を書いた絵なんだけど、
なんでもっとかわいく書かなかったのだろうかと、
ずっと思ってた。
でも実は娘を「かわいい、かわいい」と思いつつ、
なんども色を塗り重ねた結果、こうなったらしい…。
 
ちなみに、
いつも控えめな笑みを浮かべている麗子さんですが、
「爆笑」…ではないな、表現しがたいのだけど、
敢えて言うなら「ニターリ」と笑ってる絵もある。
 
これはこれで「何があったの?!」と
聞きたくなる怖さ。
勇気のある方は画像検索してみてください。
私は、やはり麗子さんは微笑の方がお似合いかと思います。
 
ところで、
なんでこの絵が怖いかって理由は他にもあって…。
 
私がこの麗子さんと似ている…。
 
あぁー、目がぱっちり二重に生まれたかった!!
二重に生まれたかった!!
 
(切実なので、二度言いました。
コピペミスじゃありません。
でも最近、ようやくあきらめがつきつつあります。)
 
 
★「怖い絵」の全体の感想
その絵の描かれた背景を知ると
見方が違ってくる絵が多かった。
私は「怖い」というより、
「知らなかった!」と思うことの方が多かった。
 
絵のアトリビュートについても書かれていたけど、
絵自体の説明よりも、
職業、食事、病気、女性、神話、歴史など様々な観点からの説明が多かったと思う。
世界史の図説を見るよう。