三橋貴明さん中野剛志さん等のお話は嘘を交える事無く事実だけを淡々と解説してくれるので嘘つきな経済評論家、経済学者、財務官僚、悪徳政治家と違って分かり易いですが、それでもお金とは債務と債権の記録であるとか金属主義ではなく表券主義であるなどと言われても今一つピンときませんし、金融財政政策のテクニックにもいちいち興味を持ってられないというのが普通の人のあり方だと思います。
 
中野さんは信用貨幣論を理解するのにイングランド銀行の季刊誌に掲載された 「ロビンソン・クルーソーとフライデーしかいない孤島」という小噺を引き合いに出され分かり易く解説してくれてますがそれでもお金の本質を理解するには何か足りないというか実感がない。
 
普通に生活する上で自分の財布の中のお金の信用は誰が担保してくれてるのかなんて気にしません。どうすればもっと多くのお金を得られるだろう儲かるだろうくらいしか考えないと思います。
 
ウォーレン・モズラーさんが名刺を使ってお金の本質を例える話はMMT(現代貨幣理論)を理解する上でとても分かり易いものです。本来MMT(現代貨幣理論)なる高尚な経済学の導入によく使われるお話です。数式や専門用語も一切なくお金の原理原則の大元の大元だけを表しているので拍子抜けするかもしれません。
 
名刺がお金に変わる瞬間とは?
 
ウォーレンさんには2人の子供がいました。彼は子供たちに家の仕事、家事を手伝わせる為にある報酬を与える事にしました。報酬とはウォーレンさんの名刺です。皿洗いをすれば名刺3枚、トイレ掃除をすれば5枚といった風にお手伝いの度に名刺を渡すのです。名刺には何の希少価値もありませんので外で売る事もできない至ってごく普通の名刺です。
 
もしあなたがウォーレンさんの子供ならどうでしょう。喜んでお手伝いしますか?幼い頃の筆者なら最初は物珍しさで手伝いもするでしょうがきっと途中で飽きてやらなくなるでしょう。名刺を貰ったところで何の役にも立たないからです。ウォーレンさんの子供たちもしかり、家事の手伝いをしようとはしませんでした。
 
そこでウォーレンさんは次のステップへと作戦を進めます。すると子供たちは渋々であれ自発的であれ、お手伝いを継続的にするようになりました。さて一体どういう作戦を展開したのでしょうか?
 
ウォーレンさんはこの家に住み続けたければ名刺を月末ごとに30枚提出しろと子供たちに命じたのです。
 
さて、この話から何が導き出せるでしょうか。
 
例えばMMT経済学の旗手ステファニー・ケルトン教授は名刺は回収する前にまず配らなければならない、スペンディングファースト(課税より支出が先)つまり税金は財源に成りえない事を第一に提唱しました。そしてウォーレンさんは必要であれば名刺を好きなだけ刷って手元に置いておけるので名刺(貨幣)不足に陥ることはない。帳簿を付ける時、刷った名刺はウォーレンさんにとっては負債となるがその負債がいくら増えたところで破綻しようがない。
 
筆者的にはこの話に国民経済の縮図をみました。国家の運営そのものです。政府支出の意味、徴税の意義、需要と供給、経済成長とGDP、投資と産業の発展、インフレ率、そもそもお金とは何なのかなどウォーレンさん一家を脳内でどんどん発展させていくと色んなことが腑に落ちていきます。
 
変わった見方だと、人の命を直接奪うわけでもないのに偽札の製造や行使がどうして重罪に類するのかって理由も本質的に理解できます。また誰が嘘つきで誰が虚勢を張っているのかも簡単に見抜けるようになります。
 
名刺がお金になるとは実は例え話ではなく本当にお金に化けてしまうという狸に化かされたようなお話だったのです。子育て世帯の親御さんは一度試してみてはいかがでしょうか。
 

 

 

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