今回も 厚生労働本省 の予算のつづきです。
というか、あけましておめでとうございます。
今年も懲りずに続けようかと思っております、ハイ。
総額は
32兆9777億4991万7000円 。
予算の内訳はこんな感じ。
今回も、労働にかかわる項目です。
今回はこんな項目から。
- 高齢者等雇用安定・促進費 88億7724万2000円
”高齢者等”なので、高齢者だけではありません。
でも金額が大きいのは高齢者関連なのですが。
たとえば、こんな支出。
高年齢者就業機会確保事業費 67億6435万円
”シルバー人材センター” にかかわる支出です。
高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、 地域社会の活性化に貢献することを目的として設立されています。
原則として市区町村単位で置かれており、それぞれが独立した運営をしています。
60歳以上の方が、会員として登録することができます。
仕組みはこんな感じ。
(図は全国シルバー人材センター事業協会からの引用です)
特に今は、介護の専門的な知識・経験が必要ない介護補助業務をすすめようとしています。
シルバー人材センターを利用したことがない介護施設に、シルバー人材センターを1カ月無償で活用してもらうキャンペーンを実施中。
上記の支出は、”都道府県シルバー人材センター連合” 、”全国シルバー人材センター事業協会” の事業費を、労働保険特別会計と合わせて、1/2の範囲内で補助します。
全国シルバー人材センター事業協会のHPを貼っておきます。
マスコットキャラクターは、チエブクロー。
高年齢者等雇用対策事業委託費 9044万6000円
シルバー人材センター事業についての市町村への定着促進などの普及・援助
シルバー人材センター連合、シルバー人材センターに対する事業運営上の指導
などのために、”全国シルバー人材センター事業協会” に支出されます。
新卒者等就職支援事業委託費 6814万6000円
新卒者向けに、就職ガイダンスを実施しています。
就職に備えて、働くことの意識、雇用形態や業種や職種などの仕事に関する知識の習得、基本的なビジネスマナーを身につけることを目的としています。
ホームレス就業支援事業委託費 2億0733万円
ホームレスの数は、全国で3065人になります。(令和5年1月時点、概数調査)
平均年齢は63.6歳、65歳以上が54.4%を占めます。
「ホームレスの実態に関する全国調査」(令和3年11月)によると、野宿生活を余儀なくされているホームレスのうち約2割が、「アパートに住み、就職して自活したい」と回答しているとの結果が。
上記の費用は、
・就業支援(就業などにかかわる個別相談、求人情報の提供など)
・就業機会確保支援(求人の開拓、求人情報の収集など)
・職場体験講習
・就職支援セミナー
に支出されます。
対象は、ホームレスが多い東京、神奈川、愛知、大阪の1都1府2県です。
刑務所出所者等就労支援事業委託費 3987万円
法務省と同じく厚生労働省でも、刑務所出所者などの就労の確保のため、取組みを実施しています。
矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院)に在所している方に対しては、ハローワークと矯正施設が連携して、職業相談、職業紹介、事業主との採用面接、職業講話などを実施するなどして計画的に支援を実施しています。
また、保護観察の対象者などに対しては、ハローワーク職員が保護観察官とチームを作り、本人に適した就労支援の方法を検討した上で、職業相談・職業紹介を実施しています。
上記の費用は、”試行雇用助成金” に支出されます。
刑務所出所者などを試行的に雇用した場合、最長3か月間、月額最大4万円を支給する取組みです。
長期失業者等支援事業費 1078万7000円
平成22年9月に終了しましたが、”就職安定資金融資” という制度がありました。
事業主都合などによる離職により住居がなくなった方に対する、住宅入居初期費用(敷金・礼金等/上限50万円)などの貸付制度です。
上記の費用は、この融資制度で回収不能が発生した場合に労働金庫に対して行う、代位弁済などの補助費用になります。
就職促進手当 1805万4000円
失業者の円滑な再就職を支援するために、雇用保険の給付の一種として設けられています。
”再就職手当”
”就業促進定着手当”
”就業手当”
などがあります。
職業転換等特別給付金 3196万8000円
就職が困難な失業者などの再就職の促進を図るため、
・ハローワークの紹介により広域に渡る求職活動を行う場合
・就職または公共職業訓練を受講するために住所を移転する場合
に、その費用の一部が支給されます。
対象者は、
・激甚な災害を受けた地域において就業していて、災害により離職を余儀なくされた方
・中高年齢者
・駐留軍離職者(日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊などの撤退に伴い、離職を余儀なくされた方)
・特定漁業離職者(国際協定などにより漁船を減らすことになり、それに伴い離職を余儀なくされた方)
などになります。
職業転換訓練費負担金 3981万2000円
上記の対象者が、職場適応訓練や職業訓練を実施する場合、国がその費用の1/2を負担します。
障害者等雇用対策事業委託費 6816万3000円
障害のある人の雇用にかかわる取組みです。
”障害者雇用促進法” では、企業に対して、雇用する労働者の2.3%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。
これを満たさない企業からは納付金を徴収しており、この納付金をもとに、雇用義務数より多く障害者を雇用する企業に対して調整金を支払ったり、障害者を雇用するために必要な施設設備費などに助成したりしています(障害者雇用納付金制度)。
上記の費用は、
・障害者雇用の実態調査
・支援者に対するセミナーの実施
に支出されます。
ちなみに令和5年6月1日現在、雇用障害者数は64万2178人、対前年比で2万8220人、4.6%増加し、過去最高になっています。(下のグラフは令和3年度までの数字です)
厚生労働統計調査費 2億2708万2000円
労働にかかわるいくつかの統計調査を実施しています。
調査結果は、厚生労働行政を進める上で重要な参考資料となっているほか、貴重な基礎資料として利用されています。
また、民間企業からも活用されています。
たとえば、こんな調査。
・ 賃金引上げ等の実態に関する調査
民間企業における賃金・賞与の改定額、改定率、 賃金・賞与の改定方法、改定に至るまでの経緯などを把握することを目的として、毎年1回実施されています。
令和5年の調査対象企業数は3620社、有効回答企業数は1901社でした。
その結果によると、1人平均賃金を引き上げた・引き上げる企業の割合は89.1%、改定額の平均は9437円になります。
グラフにするとこんな感じ。
(以下注記がない限り、図は厚生労働省からの引用です)
・ 労働組合基礎調査、労働組合実態調査、労働争議統計調査
労働者あるいは労働組合と使用者との関係や、労働組合に関する調査です。
令和5年6月30日現在における単一労働組合の労働組合数は2万2789組合、労働組合員数は993万8000人で、前年に比べて労働組合数は257組合(1.1%)減、労働組合員数は5万5000人(0.5%)減少しています。
また、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は16.3%で、前年より0.2ポイント低下しています。
令和4年の労働争議の状況をみると、総争議の件数は270件、総参加人員は5万3519人で、前年に比べて件数は27件(9.1%)減、総参加人員は6870人(11.4%)減です。
争議の件数は、過去2番目に低く、減少傾向にあります。
ストライキなどの争議行為を伴う争議を産業別にみると、件数は医療・福祉の22件が最も多く、次に情報通信業の13件、製造業の11件となっています。
・ 賃金構造基本統計調査
労働者の賃金の実態を、雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別などに調査します。
令和4年の調査によると、
常用労働者の賃金(月額)の平均は、
男性 34万2000円(前年比1.4%増)(年齢44.5歳、勤続年数13.7年)
女性 25万8900円(同 2.1%増)(年齢42.3 歳、勤続年数 9.8年)
男女間賃金格差(男を100として)75.7(前年差0.5 ポイント上昇)
短時間労働者の賃金(1時間当たり)は、
男性 1624円(同0.4%減)(年齢43.9 歳、勤続年数5.6年)
女性 1270円(同1.6%減)(年齢47.2 歳、勤続年数6.9年)
でした。
毎月勤労統計調査委託費 9億3330万1000円
賃金、労働時間、雇用の変動を明らかにすることを目的に実施される調査です。
大正12年から始まった、国の重要な統計調査です。
常用労働者5人以上の事業所を対象として毎月実施する全国調査、都道府県別に実施する地方調査があります。
常用労働者5人以上の約200万事業所から抽出した約3万3000事業所が対象です。
また、常用労働者1~4人の事業所を対象とした年1回、7か月分についての特別調査も実施しています。
令和5年10月の調査によると、
一般労働者の所定内給与は32万6028円(前年同月と比較して1.7%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1293円(3.8%増)となりました。
所定外労働時間は10.3時間(1.8%減)でした。
労働者全体の賃金の動向はこんな感じ。
名目賃金(給与)は確かに上がっていますが、実質賃金(物価上昇率を加味した賃金)は、前年同月比でマイナスのまま。
これだとちとツラいですな。
労働者協同組合設立支援事業委託費 3963万4000円
”労働者協同組合” という新しい法人のかたち、新しい働き方が始まっています。
労働者が組合員として出資し、組合員の意見を反映して、組合員自ら働くことを基本原理とする法人です。
地域のみんなで意見を出し合って、助け合いながら、地域社会の課題を解決していくことを目指している制度です。
令和4年10月から始まりました。
令和5年12月25日時点、全国で67法人が設立されています。
こんな事例があります。
上記の費用は、組合の設立を希望する方への支援や、労働者協同組合制度の周知・広報に支出されます。
興味のある方はぜひこちらのサイトをどうぞ。
高齢者等雇用安定促進業務庁費 5219万4000円
たとえば、”高年齢者雇用安定法” の改正にかかわる周知啓発に支出されます。
令和3年4月から施行されています。
外国人労働者雇用対策事業委託費 5511万円
日本にいる外国人の雇用環境の整備や、外国人を雇用する事業所の適切な雇用管理の推進、日本での就労を希望する外国人に対して職業相談・職業紹介などを行う取組みです。
外国人の日本での就労状況はこんな感じ。
上記の費用は、
・外国人雇用対策に関する実態調査
・日系人の就労環境改善事業
に支出されます。
経済連携協定外国人看護師等受入事業委託費 7006万3000円
外務省の予算でもでてきましたが、インドネシア、フィリピン、ベトナムから、外国人看護師・介護福祉士の受入れを実施しています。
累計受入れ人数は、3国を合わせて6400人を超えました。(令和元年8月末時点)
上記の支出は、受入れ状況の確認、就労・研修に関する相談・助言を行うため、国内唯一の受入れ調整機関である、”公益社団法人 国際厚生事業団” に支出されます。
つぎは、こんな項目。
- 職業能力開発強化費 50億7806万2000円
たとえば、こんな支出。
能力開発基本調査業務委託費 6499万1000円
企業・事業所と、労働者の ”能力開発” の実態を正社員・正社員以外別に調査する取組みです。
能力開発とは、次のようなものがあげられます。
OFF-JT(Off-the-job-training):職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習
OJT(On-the-Job-Training):日常の仕事を通じて行う教育
自己啓発(SD:Self-Development):社員による自発的な学習
令和4年度調査における企業の教育訓練への費用の支出状況をみると、OFF-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は50.3%でした。
計画的なOJTを実施したと回答した事業所は63.0%で、その内訳をみると、「正社員と正社員以外、両方に実施した」は1.0%、「正社員のみ実施した」は39.2%、「正社員以外のみ実施した」が2.8%であり、正社員のみに対して計画的なOJTを実施した事業所が多くなっています。
職業転換訓練費交付金 35億2189万9000円
都道府県は、それぞれ ”職業能力開発校” を設置することになっています。
離職者、在職者、学校卒業者等などに対して職業訓練を行い、職業に必要な技能や知識を習得させることが目的です。
この施設の運営に必要な経費の一部が交付されます。
外国人技能実習機構交付金 14億0729万2000円
”外国人技能実習制度” という制度があります。
受入れ企業からの賃金未払いや不当な長時間労働、暴行や暴言による人権侵害、実習生の失踪など、あまりよくない話題がでてくるこの制度。
開発途上国から優秀な若者を日本に招き、日本の優れた技術や知識を学んでもらって、母国の発展のために活躍してもらうことが目的の仕組みです。
勘違いされがちですが、本来は人手不足を補うためのものではありません。
この制度にまつわる現在のデータはこんな感じ。
上記の費用は、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護のために設立されている、”外国人技能実習機構” に支出されます。
ホームページはこちら。
技能実習制度適正化に向けた調査研究事業委託費 3334万8000円
上記の技能実習制度について、国内の監理団体、実習実施者、技能実習生、主要な送り出し国における状況を調査するために支出されます。
雇用開発支援事業費等補助金 587万2000円
”緊急人材育成・就職支援基金” という基金が、2009年から2011年にかけて設立されていました。
雇用保険を受給できない人(非正規労働者、長期失業者など)に対するセーフティーネットの構築が目的でした。
基金としてはすでに解散し、残高は国庫に返納されています。
上記の費用は、この基金の信用保証経費として支出されます。
技能検定検査指導旅費 4万4000円
”技能検定” の学科試験を指導監督する旅費になります。
技能検定とは、働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度です。
全部で131職種の試験があります。
試験に合格すると合格証書が交付され、”技能士” の資格を手にすることができます。
つぎは、若年者の就労にかかわる項目。
- 若年者等職業能力開発支援費 7138万6000円
たとえば、こんな支出。
若者職業的自立支援推進事業委託費 6202万5000円
若者の数が減っているにもかかわらず、若年無業者(15~34歳で、就労しておらず、家事も通学もしていない者)の数は近年、50~60万人で推移しているというデータがあります。
そこで、職業的自立のためのサポートを継続的に行う取組みとして、”地域若者サポートステーション事業(通称:サポステ)” を実施しています。
対象は、15歳〜49歳までの、お仕事をされていない方や就学中でない方。
全国に177か所設置されており、昨年度は1万2163人が、この支援を通して就職や公的職業訓練へ進みました。
公式キャラクターは、わーくまくんとわーくまちゃん。かわいい。
アンバサダーは、なかやまきんに君です。
いいですね。パワーーーー!!
サイトのリンクを貼っておきます。
つぎは、こんな項目。
- 障害者等職業能力開発支援費 40億3078万5000円
たとえば、こんな支出。
職業転換訓練費負担金 10億7874万3000円
障害者や、母子家庭の母親などが公共職業訓練を受講する場合、訓練手当が支給されます。
国はその費用の1/2を負担します。
障害者職業能力開発校運営委託費 29億5204万2000円
国が設置した ”障害者職業能力開発校” が、全国に11あります。
その運営費用として、運営する都道府県に支出されます。
所管する法人への支出をふたつほど。
- 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 一般勘定運営費交付金 4億2863万7000円
通称 : JILPT(The Japan Institute for Labour Policy and Training)
所在地 : 東京都練馬区上石神井4-8-23
事業 :
・厚生労働省の労働政策の企画立案、調査研究
・厚生労働省の労働に関する事務を担当する職員などに対する研修
・成果の普及、政策提言
HPはこちら。
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業能力開発勘定運営費交付金 8億6315万9000円
通称 : JEED(Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons with Disabilities and Job Seekers)
所在地 : 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2
事業 :
・高年齢者等の雇用促進のための給付金の支給
・高年齢者等の雇用に関する事業主への相談・援助
・高齢期の職業生活設計に必要な助言・指導
・障害者職業センターの設置及び運営
・障害者職業能力開発校の運営
・障害者雇用納付金関係業務(納付金の徴収、助成金等の支給、障害者の技能に関する競技大会、障害者雇用に関する講習・啓発等)
・職業能力開発短期大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発促進センター、職業能力開発総合大学校等の設置及び運営
・求職者支援訓練の認定及び訓練の実施に必要な助言・指導
・雇用促進住宅に係る債権管理業務等
HPはこちら。
今日はここまで。
厚生労働省のホームページのリンクを貼っておきます。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。
本年が皆さまにとって良い一年となりますように。
ではまた。