すみません、また間が空いちゃった。
今回も 厚生労働本省 の予算のつづきです。
総額は
32兆9777億4991万7000円 。
予算の内訳はこんな感じ。
今回は、こんな項目。
- 麻薬・覚醒剤等対策費 5億1196万5000円
麻薬や覚せい剤、大麻、向精神薬などといった、違法薬物を取り締まるのも、厚生労働省の仕事です。
”麻取(麻薬取締官)” という職業は聞いたことがあるかもしれません。
厚生労働省の出先機関である、”厚生局” に所属し、取締りをしています。
警察官ではありませんが、”特別司法警察職員” として、捜査や逮捕の権限を持っています。
(このお仕事については、また厚生局の予算で触れると思います)
そもそもの話ですが、麻薬や覚せい剤は、「ダメ。ゼッタイ。」です。
こういった薬物の乱用は、心と身体の両方に深刻な悪影響をおよぼします。さらに、やめられなくなる”依存性”と、”妄想・幻覚”による自傷・他傷の危険性という特徴があります。
(ここからでてくる図は、注記ない限り厚生労働省からの引用です)
自分に深刻な問題を引き起こし、家族にも深刻な問題で、社会にも深刻な問題となります。
良いことは何もありません。
最近特に話題になるのは、”大麻” や、処方薬や市販薬の大量摂取(オーバードーズ)でしょうか。
ちなみに”乱用”という言葉を使いますが、1回でも乱用です。
この「ダメ。ゼッタイ。」というキャッチコピーですが、とても浸透しています。
聞いたことがある方も多いかもしれません。
なんでも1987年から使用されているとか。
こういったキャンペーンの効果もあり、また地理的要因もあると言われますが、日本での違法薬物の乱用件数は、とても低い状況にあります。
少し古いデータですが、ほかの先進国と比べるとこんな感じ。
これはとても素晴らしいこと。
ゼロにすることはできないかもしれませんが、こういった取組みやこの状況は、ぜひ続いてほしいものです。
この分野での取り組み、たとえばこんな支出。
麻薬中毒者措置入院費負担金 43万7000円
麻薬中毒者護送費負担金 5000円
都道府県知事は、麻薬中毒者を本人の意思にかかわらず、医療施設に入院させて必要な医療を行うことができます。
精神保健指定医の診察の結果、受診者が麻薬中毒者であり、かつ、使用を繰り返すおそれが著しいと認めることが条件です。
この費用は基本的に、全額公費でまかなわれますが、3/4を国が負担します。
上記の費用は、3人x32日を想定しています。
あへん需給調査旅費 59万7000円
あへん等取扱業務庁費 228万5000円
あへん購入費 5万円
けし耕作者災害補償費 5000円
”あへん” は、”けし” という植物から作られる麻薬です。
それ自体も麻薬ですし、あへんから抽出された ”モルヒネ” を精製して、”ヘロイン” という麻薬も作られます。
当然、使用も所持も、犯罪になります。
原料となるけしの栽培も、犯罪です。
(図は厚生労働省からの引用です)
ただ、あへんは医療や学術研究にも使用されます。
このため、国があへんの購入、収納、売渡しを実施します。
上記は、そのための支出です。
あへん購入費は予算上、国内産あへん(モルヒネ)0.2㎏の購入費になります。
麻薬等乱用防止対策旅費 844万3000円
麻薬等乱用防止対策業務庁費 4億2689万7000円
具体的には、こんな支出があります。
・麻薬や覚せい剤などの撲滅のための周知啓発(上記のポスター製作なども含まれます)
・関係機関の指導
・野生大麻やけしの除去、焼却処分
・危険ドラッグの新たな成分指定に必要な分析(今年の8月にも、新たに7物質が麻薬に指定されました)
・職員を香港及び及び米国(DEA:アメリカ麻薬取締局)に派遣し、海外の捜査機関と連携した情報収集活動
・薬物乱用者に対する再乱用防止対策
・医療用麻薬の適正使用の推進
大麻・けし不正栽培等対策委託費 58万4000円
大麻、けしを除去する経費として、都道府県に支出されます。
ちなみに、令和元年度ですが、全国で136万2744本の大麻とけしが除去されています。
危険ドラッグ対策委託費 204万4000円
危険ドラッグについて、査察技術の向上を目的とした合同模擬査察を実施しています。
薬物乱用防止普及啓発推進事業委託費 5593万円
2つの取組みがあります。
・薬物乱用防止啓発訪問事業 5225万円
学校・地域のイベントなどからの派遣要請に応じて、講師が訪問して、薬物乱用防止に関する正しい知識を普及するための事業です。
”小学館集英社プロダクション” に支出されます。
ぜひ御活用ください。
リンクを貼っておきますね。
・薬物乱用防止中堅指導員養成事業 368万円
地域における薬物乱用防止に関する啓発活動を推進するために、”薬物乱用防止指導員” が任命されています。
この指導員の研修のために支出されます。
つぎは、化学物質について。
- 化学物質安全対策費 2億8231万2000円
化学物質は、工業薬品、農薬、試薬など多方面で用いられ、間接的に生活に欠かせません。
しかし中には、毒性の強いものもあり、少量でも身体や環境に害を及ぼす性質を持っています。
そのため、国で規制をしています。
こういった化学物質にかかわる取組みです。
たとえば、こんな支出。
医薬品審査等業務庁費 4602万4000円
具体的には、こんな支出があります。
・毒物、劇物の指定のための毒性試験
・毒物劇物営業者(製造業者、輸入業者、販売業者)の登録システム
・PRTR制度(特定化学物質の排出量、廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量を、事業者が国に届け出をし、国が排出量・移動量を集計・公表する制度)のデータシステムの整備
・化学物質に対する規制のあり方、リスク管理方策、毒性試験の評価基準などの国際的な整合性を図る取組み
など。
家庭用品等安全対策費 6292万円
具体的には、こんな支出になります。
・家庭用品に使用される有害物質の含有量などについて、規制基準を設定するための試験検査
・家庭用品による健康被害情報の収集、調査、究明のための試験
・家庭用品による健康被害について、「安全確保マニュアル作成の手引き」を策定するための試験
・室内の空気環境を汚染する化学物質(家庭用品、建材などから放散される化学物質、ホルムアルデヒドなど)について、指針値の策定、標準的測定方法、都道府県における対応方法のマニュアルの策定、実態調査
・製品の安全確保について評価手法の構築
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行費 8821万7000円
厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣は、”優先評価化学物質” を指定します。
これは、
・人または生活環境動植物への長期毒性に該当しないかどうかが今のところ明らかでない
・相当広範な地域の環境中に相当程度残留しているか、または近くその状況に至ることが確実であると見込まれる
ことから、評価を優先的に行う必要があると認められる化学物質です。
国は、製造・輸入事業者に対し有害性の調査指示を行うことができ、人または生活環境動植物へリスクがあると判定された場合は、より取扱いのルールが厳しい ”第二特定化学物質” に指定されます。
この評価のための調査に支出されます。
予算上は、12物質が対象。
化学物質情報基盤システム運営等委託費 2338万9000円
適切な化学物質の管理、化学物質のリスク評価の実施のために、必要となる情報を提供するデータベースがあります。
”化学物質総合情報提供システム:NITE-CHRIP” といいます。
この運用のために、”独立行政法人 製品評価技術基盤機構” に支出されます。
サイトはこちら。
化学物質国際安全性点検強化費 5240万4000円
具体的には、こんな支出があります。
・内分泌かく乱化学物質についての実証試験(OECD:経済協力開発機構で策定する試験プロトコールにもとづく)
・OECD:経済協力開発機構で健康影響に関する調査・点検が行われている、高生産量既存化学物質についての、国内の使用実態・曝露情報の収集と評価
・新素材のナノマテリアルについて、消費者向け製品への使用実態などの情報収集と、安全対策の検討
など。
つぎは、こんな項目。
- 生活衛生対策費 42億7666万7000円
ここでいう ”生活衛生” とは、”生活衛生関係営業(生衛業)” という業種をさします。
法律で規定されているのは、以下の18種。
(図は厚生労働省からの引用です)
いずれも国民の生活に不可欠なサービスや商品を提供しているところから、営業の経営の健全化、衛生水準の維持向上などを図る取組みです。
たとえば、こんな支出。
株式会社日本政策金融公庫補給金 30億2280万4000円
”日本政策金融公庫” は、国が株式の100%を常時保有することが法律で定められている、特別な金融機関です。
財務省の予算ででてきたかと思います。
日本の中小企業・小規模事業者や農林漁業者など、事業に取り組む方々を支援する目的があります。
この金融機関に、生衛業を対象とした融資があります。
この融資のための補給金です。
ほかにも融資の種類がありますので、気になる方はぜひ日本政策金融公庫へお問い合わせください。
生活衛生関係営業対策調査委託費 2813万5000円
生衛業の振興、衛生水準の維持向上の推進
ビルクリーニング分野における、外国人材の受入れ体制の適正化調査
に支出されます。
生活衛生関係営業対策事業費補助金 12億0691万9000円
3つの取組みがあります。
・生活衛生営業衛生確保振興指導等事業費 11億5859万2000円
生衛業の組織基盤や相談支援体制の確保
収益力の向上などにより、悪化した業績を回復するための支援
をする取組みです。
”公益財団法人 全国生活衛生営業指導センター”
”生活衛生同業組合連合会”
”生活衛生同業組合”
”都道府県生活衛生営業指導センター” に支出されます。
・受動喫煙防止対策事業費 3133万5000円
労災保険の適用を受けない生衛業の事業主(いわゆる一人親方)が、受動喫煙防止対策として、その事業場で喫煙専用室を設置するなどの工事を実施する場合、その費用の一部について助成金が交付されます。
生衛業社の受動喫煙防止対策の推進が目的です。
ちなみに、中小企業には、別の助成金制度があります。
・ビルクリーニング業における外国人材確保等事業費 1699万2000円
国内の労働者不足が深刻化しているため、国はビルクリーニング分野における ”特定技能人材” の受入れを認めています。
国としては、最大で3万7000人の受入れを想定。
この取組みのために、”公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会” に支出されます。
建築物環境衛生管理技術者試験費 37万7000円
”建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理士)” という国家資格があります。
床面積が3000m2以上の特定建築物には選任が義務づけられています。
大規模な建築物のビルメンテナンスの統括がお仕事です。
ちなみに、令和3年度の受験者は9651人、合格者は1707人、合格率は17.7%でした。
上記費用は、この資格の免状証の発行費用になります。
1通108円です。
今日はちょっと短いのですが、ここまで。
次回は労働にかかわる項目に移ります。
厚生労働省のホームページのリンクを貼っておきます。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。
ではまた。