もうじき雛祭りですね。

今は屋根裏収納の何処かにひっそりと眠っていて数十年も目にしていませんが、私には世界でたった一つの雛人形セットがあります。

本当に大切な "宝物" です。



私は戦争末期、空襲の最中に東京の蒲田で末っ子として生まれました。
私に記憶はないけれど、毎晩のように襲う爆弾投下と猛火の中を逃げ惑ったという家族の話を聞く度に、今の平和がありがたいと思います。
姉達の子供時代には家に雛人形もあったのでしょうね。命だけは助かったとはいえ、あの戦争で何もかも焼けて無くなってしまいました。

戦後5・6年が経って何とか落ち着いた沼津での生活の中で、雛人形も無い末の妹(つまり私)のためになんとかしてあげようと思ったのでしょうか。
長姉Y姉は先に東京に出てひとり暮らしをしていた二番目のS姉とも相談したのでしょうね。
中学の美術教師をしていたY姉がメイン、高校生の兄や当時は中学生だった(今は亡き)すぐ上のF姉の3人で何日もかけ、雛人形セットを手作りしてれたのです。
材料は、ハガキサイズ厚さ1センチ強の石膏板。それにY姉が大体のデッサン。彫刻刀で粗削りするのが兄。Y姉が細かい直しと、絵の具で細密な絵を完成させると中学生の姉が仕上げのニスを塗り…完成。
男雛女雛、三人官女、五人囃子、右大臣と左大臣の人形の他にも、ぼんぼりや花、菓子器、家具調度、橘と桜?の木など揃っているんです。母が用意してくれた緋毛氈を敷いた段飾り。小さくても、走り回りたいほど嬉しかった。

大人になり結婚し、一人娘と楽しんだ   "雛人形セット"  でしたが、孫は男の子。
もう飾る事もなくなりました。


今は、このイラストで我慢かなぁ。