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●入院3日目

ついに陣痛促進剤を使う日が来ました。
診察をして、充分柔らかくなり子宮口も4cm~と開いてきたので、本格的な誘発が開始です。

陣痛促進剤を使用するので、赤ちゃんとの対面もそろそろ……。 
ただ薬の効き具合も人によって違うとのことなので、旦那さんにも時間かかるかなー?なんて言っていました。
中には3日とかかかる方もいるそうです。
正直使ったこともないので、どんな感じなのか想像もつかなかったです。

いつ赤ちゃんが産まれてもいいように、LDRではなく、昨日も使ったより広い分娩室での処置となりました。
万が一に備えてパジャマではなく、手術服みたいなのを着ました。

陣痛促進剤は点滴で腕から投与。
12mlからスタートし、30分置きに12mlずつ増やして、最大120mlまでいくそうです。
お腹にはモニターをずっとつけ、赤ちゃんの状態を見ながら促進剤の量を決めていくとのことでした。

促進剤を始める前に赤ちゃんをエコーで確認。
エコーで赤ちゃんを見たのはこれが最後でした。

「うーん、臍帯巻いてるね」

つまり、赤ちゃんの身体にへその緒が巻いてあるのです。
エコーで見た感じ、臍帯をたすきがけのようになっていて、一部首にかかっていました。

産む時に旋回させるから、
巻いてあるのは引っかかることはないけれど
お腹が張ると臍帯で首が締まる形になり、心拍が弱くなるのかもしれない。

「帝王切開も考えていきましょう」

同意書を書いても、ここで言われてもまだ手術という実感は湧きませんでした。

推定体重1700g。
誤差が±200~300gあったら、2000g超えてるかも知れない。
でも、マイナスだったら1500g切るかもしれない。

少しでいい。
大きくなってますように。


陣痛促進剤開始 12ml
全く痛みもなく、張りもなく、普段と変わらない感じでした。
看護師さんが来て、改めて手術の説明を聞いたり、小児科の看護師さんが声をかけに来てくれました。

ちいさいくんは生まれる前に既に小さいことがわかっていたため、帝王切開でも経膣分娩でも小児科医と小児科の看護師さん立ち会いでの出産になる予定でした。

小児科の看護師さんが

「大丈夫だからね、
赤ちゃんが生まれた後はまかせてね。
だから、安心して産んでね」

と言ってくれて
ひとりじゃないんだ、と。
心強く感じました。


陣痛促進剤 24ml
まるで変化はなく、痛みもほとんどなく内診しても4cm変わらず……。
ただ点滴を刺してる腕が良くないのか、エラーが鳴りまくる滝汗
何回やっても鳴りまくる滝汗滝汗

しかも、めっちゃ痛い……チーン

結果、腕を変えました。
帝王切開の予定があるので、お昼ごはんは今日も抜きでした。

お腹が張る度に赤ちゃんの心拍は100くらいになりました。

陣痛促進剤 36ml
ここに来て異変が。
赤ちゃんの心拍が1度80くらいまで落ち
(正常値120~160)
促進剤の量を上げず様子を見ることになりました。

「痛くはない?まだまだ余裕?」

痛みは0ではないけれど、生理痛みたいな感じで、お嬢さんの時の陣痛に比べたら全然だった。

「あ、でも痛みに強いほうだと思います……」

「え?そうなの?今自分の中の痛みレベルだとどのくらい?」

「1か2くらい。痛みは等間隔にあるけど気にならないレベル」

この時はまだ本当にたいして痛くなくて……。
元々生理痛も重く、それに加え頭痛や肩こり腰痛、妊娠中は坐骨神経痛の悪化と痛みを耐えることも多かったせいか、蹲るレベルじゃないと痛いと思えないタイプの自分。

「あー、なるほどね。わかったよ」

看護師さんが1度内診しましょうと確認。
まだまだ子宮口は開かず。

この間ずっと旦那さんと連絡を取っていました。
朝着替えを持ってきてくれた後、昼過ぎにまた来るね。と旦那さんは娘のところに行っていました。
私自身もまだまだ余裕で、まだまだかなー?なんて話していました。


陣痛促進剤 48ml
赤ちゃんの状態も問題なさそうなので、促進剤の量を増やしました。
やっと痛みが等間隔になってきました。
でもまだまだ余裕で、旦那さんと失敗しないゆで卵の作り方の話とかしていました。

痛みが来た時は顔を歪めるくらいには痛かったけれど、まだ会話はできるレベルで子宮口も4~5cmとまだまだ時間がかかるだろうと思っていました。


陣痛促進剤 60ml 
急に痛い……結構痛い……。
旦那さんとアホみたいなやりとりをしていた直後、お腹が痛くなると赤ちゃんの心拍がガンガン下がっていきました。

「来れる?帝王切開になるかも」
そう送った後は、もう携帯を見る余裕はありませんでした。

今までお腹が張って、心拍が落ちても100前後までで止まっていました。

耳元で聞こえるモニターの音がゆっくりになるのを感じました。
心拍が落ちるとモニターが警戒音を鳴らすのですが、その音がなりやむ事はありません。

ピコン……ピコン……
140あった心拍はお腹の張りに合わせて120……100……80……70と上がることなく下がり続けました。

担当の看護師さんが来ました。
「赤ちゃん、ちょーっと苦しいの強くなってるから、お薬止めるね」

酸素マスクを渡されて
「赤ちゃんに酸素がいくように、ゆーっくり呼吸できる?」
ただただ言われるままに
ゆっくり吐いて、ゆっくり吸ってを続けました。

次から次へと看護師さんが来て、
「すぐに先生呼んで!!」


どんどん緊迫していく空気に
ああ、危ないんだ……

どんどん小さくなる心拍に
ああ、あたし
生きてる赤ちゃんに会えないかもしれないんだ……


涙が溢れてきました。
ここに来て考えないようにしていた最悪が頭によぎりました。

どんなにパニックになっても
酸素マスクだけは離しませんでした。
ゆっくりゆっくり呼吸することしか出来ませんでした。

先生が来て、優しい笑顔で言いました。
「帝王切開しましょう。」

「はい」

増え続ける看護師さん。
不安でいっぱいで身体中が震えました。
帝王切開の準備で着圧ソックスを履かされ、お腹を切るので必要処置をされました。

「大丈夫よ、大丈夫だからね」
ベテランっぽい看護師さんから、新人看護師さんまで皆笑顔で、大丈夫よと言い続けてくれました。

手術室の準備をしてくれている中、ストレッチャーに移動し、麻酔を打つというタイミングで1度内診をしました。

「ああ、開いてる!8cm、先生呼んで」
担当の看護師さんが内診すると、さっきまで開いてなかった子宮口が8cmまで開いていました。

「手術室、間に合わない!下からの方が早い!」

ストレッチャーから、再び分娩台に戻りました。
この時、旦那さんが到着したのですが、入る事は出来ず、手術室の方で準備をしていた小児科医、小児科看護師さん、先生が戻ってきました。

その間も、1分も間隔ない痛みの間赤ちゃんの心拍は落ち続けました。
間隔が短いので、心拍が戻り切ることなく苦しくなるからか、80……60……と小さくなり続けました。

先生が診察すると
「ああ……大丈夫。ちいさいから押したら下からの産める。
あと少しで、会えるからね。
大丈夫だからね。」

そして、そのまま看護師さんが素早く準備してくれました。
「皆さん、準備はいいですか?」

まだ破水してなかったので、破膜し、その途端忘れていた感覚が蘇ってきました。

カーッと熱くなる感覚……
尋常じゃない痛み、
3度いきんだ後、会陰切開。

「次で出します!僕がお腹押しますね。」

次のいきみと同時に先生がお腹を押し、
強い痛みがあり、その後強い痛みが引いていく感覚……
小さな、とても小さな赤ちゃんの泣き声が聞こえました。

「赤ちゃん、でました!
まだ、泣かないでねー偉い偉い」

すぐ横を見ると、産まれた赤ちゃんが処置を受けていました。

「わぁ、ぐるんぐるんだね。
うんうん、小さいね。2000gはないかな。
でも、元気だね。
はいはい、もう泣いていいよー」

やっと泣かせてもらえた赤ちゃんも小さい声ながら泣いていました。
目が開いて、目が合いました。

すごく、すごく小さかった。
処置を受けて、保育器に入れられた赤ちゃんに少しだけ触れることが出来ました。

「おめでとうございます。
元気な男の子ですよ。」

赤ちゃんは保育器に入ったまま、すぐ連れていかれました。

その後自分自身は胎盤の排出や会陰を縫う処置をしました。

「お母さん、すごく呼吸上手でした。
出産もすごく上手でしたよー
赤ちゃんにたくさん酸素が送れました。
だから赤ちゃんも無事に産めたんですよー」

やっと安心して涙が溢れました。
やっと旦那さんも部屋に入ることが出来ました。

「お疲れさま」

「赤ちゃん見た?」

「一瞬だったから、ちゃんとは」

「小さかったね」

「うん……」

「でも泣いてたよ」

「そっか、」

「小さかったけど、声も」

「2人とも無事でよかった」

「うん」

「直前まであんなメールだったし」

「あたしもびっくりした」


非常に慌ただしく、60mlに増やしてから
1時間ちょっとというスピード出産。
1時間で子宮口も全開だったので、短時間で壮絶な痛みが訪れたのですが、もうそれどころではなく……

あっという間に産まれたけれど
2度とこんな思いはしたくないってくらい
怖かったです。