チビのハルくん、自閉っ子。

チビのハルくん、自閉っ子。

知的障害を伴う自閉症児ハルくん。問題行動山積みだけど可愛い笑顔はママの宝物!

【執筆:2015年04月04日20:41 3才】


冬本番


街はクリスマスカラーに彩られ、女優よろしきお洒落女子達が、冬の装いも華やかに、まばゆいばかりのオーラを鱗粉のように撒き散らしながら闊歩する姿もサマになる12月…


女子を通り越した主婦達も、白熱電球と暖炉の炎が演出する、寒い夜がよく似合うシチューのCMかの如く、家族がもたらすぬくもりと幸せをぎゅっと抱きしめたくなる12月…


そんな寒気をものともしない、温かさと華やかさを備えた心躍る季節には、幼稚園も煌びやかに飾り付けられ、秋の大運動会にも勝るとも劣らぬ一大イベント、「お遊戯会」が待ち受けているのだ


私は日々先生方と、本番チビハルがこうなってしまったらこうする、ああいう行動を起こしたらああする、先生はどこまでサポートする…

など直前まで綿密な打ち合わせを重ねに重ね、ようよう当日までこぎつけた。


開場時間となり、子供3人目です〜、4人目です〜という保護者古参兵などは、お遊戯会の席取りも心得たもので、新参兵の私達がノコノコ参上した時には、既にアリーナにはズラリと高価な三脚が立ち並び、そのステージを十時線上に捉えている。


あ、あ、空いている席は…と、オロオロ会場を見渡すも、後方まで寿司詰めギューギューびっしりで、最後列端っこにようやく座り込むスペースを見つけたが、その狭さは尋常でなく、正座しつつ肩をすぼめていなければならない程の密集地帯であった。

目の前は人の頭、頭、頭…

果たしてここからステージが見えるだろうか…


普段、元気いっぱいのコハナも、その息苦しさに恐れをなし、身動きもせず私にしがみ付いている


しかし保護者の波は次から次へと押し寄せ、会場に入り切れない人々が、廊下まで溢れ始めた


仕方ない…座れただけでもヨシとしよう

来年への教訓だ…


そんな風にオドオド、ヒヤヒヤ、ドキドキと、

焦る心が落ち着く間も無いまま、チビハルの年少組は華々しくオープニングアクトを飾った


子供達は手に持つ鈴を鳴らしながら、大人達を悶絶させる可愛らしいエンジェルボイスで、元気一杯 合唱を始めた


チビハルは…ととと、最前列端っこに居る


歌うでもなく鈴をかじっていたが、何とか大人しく立っている


そうだ…頑張れ…!その調子…!!


祈るような気持ちで見つめるのも束の間、チビハルは案の定…ウロウロし始めた


保護者達が一様に熱い指先で、我が子の晴れ姿をビデオにおさめているというのに、歩き回るチビハルが他の子にかぶってしまっている…


チビハルだけが出来ないという劣等感等は普段からあまり感じない私だが、輪を乱している申し訳なさには胸が締め付けられた。

冷たい汗が背中を伝い、出て行って手を貸したい…という衝動が どうしようもなく湧き上がって来た頃…


ふとチビハルは上段の端っこに、いつもお世話をしてくれるカリンちゃんを見つけた。モソモソと段をよじ登り その横に落ち着き、何とか最後までニコニコと大人しく立っていた


いくつかの演目の後、再びチビハルは登場した。煌びやかな衣装を身につけたお遊戯だったが、他の子達が一糸乱れぬダンスを披露する中、チビハルはというと、ステージ端の緞帳で陰になっている台の上で、最初から最後まで飽くことなくピョンピョンと飛んでいた


だが私は、チビハルがあまり乗り気でなかった衣装をちゃんと身につけ、最後までステージ上にいられた…それだけでも充分であった


お遊戯終了後、園長先生がマイクで子供達の頑張りを褒めている


そしてチビハルに向かい、「 チビハルくん、いいの、いいんだよ、それでいいの。来年はもっと上手になるからね、いいんだよ 」と頭を撫でてくれた


その後、保護者に向かい、「我が園では遅れのある子供達も受け入れています、全て子供達の個性と考え、大切に成長を見守っています」そう話してくれた。


もちろん全ての保護者に受け入れて貰える訳ではないし、時には謝罪をしなければならない場面もあるかもしれないが、


「気にしないで!」

「 チビハルくん頑張ったね! 」

「うちの子だって、世の中には困難を抱えた人も居る事を、チビハルくんから学ばせて貰ってるんだから!」

と声をかけてくれる保護者や、大きな拍手を下さった保護者もおり、感謝で胸がいっぱいになった


園長先生は最後に子供達1人1人にインタビューをしていた。

「今日はどうでしたか?」とマイクを向けられた子供達は、「頑張りました!」「上手に出来ました!」「楽しかったです!」と、思いの丈を語っている。


その聡明さに驚きつつ、チビハルは…

何をされてるのか意味が分かるだろうか…

順番が来るのを、じっと、見守る。


園長先生「チビハルくん、上手に踊れましたか?」

するとチビハルはそ~っとマイクに顔を近付け、

「ムニャムニャムニャ……ました」

そう答えたではないか!


それはとてもとても小さく、聞き取れない程のささやきであったが、私の耳には これ以上ないほど愛おしく流れ込み、柔らかい羽で撫でるように、いつまでもいつまでも母の胸を震えさせた


今では10cm以上、身長差のあるクラスメイトも多くなり、背伸びしても誰にも敵わないクラス1小さなチビハルであるが、

疾風の様に駆け抜けるクラスメイトの目覚ましい成長の中で、チビハルは立ち止まり、振り返りしつつ、小さな歩幅で一生懸命歩いている


そして時折、小さな幸せを

ふいに投げてよこす


涙腺が脆くなった私は、自分なりに全てをやり遂げ、可愛い衣装に身を包んだまま出て来たチビハルをそっと受け止め


「おうちに帰ろうね」



と…抱き上げる