ベージュが亡くなりしばらくウサギは迎えなかった。
ケージは空のまま部屋にあった。
12月、彼の実家に挨拶に行くことになる。彼が言った。
「クリスマス・プレゼントは何がいい?」「ウサギ」と
答えていた。
二人で東急へ行った。彼の実家行きの前だった。
すごく珍しい柄のウサギがいた。そして女の子で
すごい美形だった。
衝動的に欲しくなった。でも、実家行きがある。
その日までの取り置きは出来ないとのことで諦める。
彼の実家行きが終わり、また東急へ。
今度はその日に連れて帰れる。
「どの子がいい?」「この子」何か、目立たない色だし、
特徴も無い子だったが惹かれた。
名前は色の通り「グレー」。家へ連れてきてみると、とても元気で茶とも相性も良さそう。
茶はひたすらグレーが大きくなるのを待った。グレーのケージの前を通ると、背伸びしてガシガシとケージを引掻く。
母が、「何なの、この子は・・・」とあきれるくらいしつこく。
可愛かった。
目が大きく、女の子っぽい顔つきだった。足が体の割りに細い。
白の襟巻きは、現グレーよりも多い。とにかく若い頃はよく動く子だった。
そして、いつも張り切った顔をしていた。何回、この疲れを知らない元気な顔に励まされただろう。「グレーも張り切ってるんだもんね・・・」
と自分に言い聞かせただろう・・・
グレーは毛玉を吐くウサギだった。ある日、「ゲッゲッ」とやっているのを発見。
途中まで何か出したので見ると2センチ程の毛玉。ひっぱり出したことが
ある。その後は見てないが、その声は夜中とかに聞いたことがある。後に、飼育本でウサギはネコのように吐くことが出来ない動
物と知って驚く。
茶はいよいよグレーと結婚したがる。私らの結婚は先であったが、ウサギたちを同居させてみることが必要だったので
茶は私の家へ来る。毎日、グレーと茶を部屋で出してみて
相性を見る。茶が真ん中にいると、グレーが走り寄り、
茶の鼻先を自分の鼻でつついてからサッと逃げるなんて行動が
多い。「これは大丈夫だ」・・・
そして、同居させてみると、すんなりと一緒に寝ていた。
行動的に、すぐ動くグレーと対照的に、
茶は「おい、ちょっと考えてからにしろよ。。。」
と言うような感じの子。
そんな仲のいい二羽だったが、茶が先にお月さまへ。
一人残されたグレー・・・茶の帰宅を待っているような顔だった。
そうだよね、7年も連れ添ってきたんだもん。
寂しそうだったので、チャー購入
チャーとは二年ばかり平穏な時間が過ぎた。
グレー9歳。丸々としていたグレーも多少毛の艶が薄れ
肉も落ち、チャーと比べるとやっぱり年を感じた。しかし、
相変わらずの張り切った顔は健在だった。
これは2番目の夫:チャー
ある年の秋頃から、出しても走らなくなる。いつもアイリスの
ケージの地下にもぐってあまり出てこない。年齢のせいかと
思っていた。
しかし、ある日グレーの息がおかしいことに気づく。
苦しそうだ。病院でレントゲン、検査。病院二件。
子宮ガンとその転移であることが分る。
上を向いて、「ハッハッ」と息をする。肺への転移だろう。
すぐ酸素室へ。グレーはもう助からない。
見ただけだと、酸素室の中ではいつものグレーと変わらない。
野菜をよく食べ、タオルを掘ったりして。
でも酸素室から出ると自分で息は出来ないのだ。ガン細胞がグレーの喉まで犯してしまっている。
この翌日に安楽死は行われる予定だった。嫌な気持ちだった。いくら苦しみを緩和させて、安らかに
眠らせるつもりでも「殺す」ということである。
しかし、グレーはこの数時間後、腸あたりのガン細胞がはじけてそのショックで月へ。。。
私に心の負担をかけることなく自分で茶のもとへ旅立っていった。解剖を依頼。仕事から帰って病院へ急行すると
綺麗な死に顔のグレーがいた。
グレーを苦しめたガン細胞は、子宮から喉頭まで
びっしりと寄生していたが綺麗に取り除かれた。
もう子宮が痛いことも、息が苦しいこともないよ。
虹の橋で茶と一緒に仲良く遊んで待っていられるよ。
庭の茶の横に眠る。。。
特別に可愛い訳でもなかった。何の特徴もない子だった。
しかし、このグレーと過ごした9年は様々なことがあり、
私には大きなものであった。度重なる引越しと、環境の変化に
よく耐えてくれた。ごめんね、あの頃は牧草なんて知識が
無かった。
そして、ずっと一緒にいてくれて有難う。
どんなに元気をもらったか・・・
いつも張り切っていたグレー、ゆっくり休んでね。