3月11日に新指定の国宝と重要文化財の答申がありました。
仏像だけピックアップしますね。
(重要文化財に有形文化財を追加して国宝に)
・善春作木造叡尊坐像一躯
・像内納入品
【大きさ】像高88.0㎝
【所有者】宗教法人西大寺(奈良県奈良市西大寺芝町1―1―5)
弘安3年(1280),真言律宗の宗祖である叡尊が80歳の時に,弟子達が造らせた肖像彫刻である。作者である善春は興福寺所属の工房の仏師で,父善慶を継いで叡尊関係の造像を手掛けた。その造形には当代の写実表現の追求の成果とともに,南都における古代以来の伝統の蓄積をうかがうことができ,
鎌倉肖像彫刻の傑作と評価される。納入品は叡尊伝の基本史料である『自誓受戒記』など種類の豊富さ,情報量の多さにおいて日本の像内納入品の遺例中,代表的な品である。
(鎌倉時代)
(重要美術品に有形文化財を追加し重要文化財に)
・木造不動明王及脇侍像五躯
・銅造倶利迦羅竜剣一基
【大きさ】像高不動明王83.6㎝ 脇侍95.1~107.1㎝、倶利迦羅竜剣150.2㎝
【所有者】宗教法人宝山寺(奈良県生駒市門前町1―1)
真言律宗の傑僧,湛海(1629~1716)の開いた宝山寺の本尊で,不動明王を中心とする群像。不動は湛海の自作で,同人が数多く製作した不動像の中で最も迫力に勝り,その代表作である。脇侍のうち二童子は湛海の前半生においてその仏像製作を支えた仏師,院達の手になるとみられ,江戸時代彫刻中の優品である。これらの生彩に富んだ造形は,宗教者による旺盛な造形活動と,伝統的な職業仏師の接触が生んだ成果であり,その点で本像は江戸彫刻の特質をよく示す作例と評価される。
(江戸時代)
(有形文化財を重要文化財に)
・ 木造十大弟子立像八躯
【大きさ】像高47.6~48.9㎝
【所有者】独立行政法人国立文化財機構(東京都台東区上野公園13―9)
京都国立博物館保管
京都常楽院に,釈迦如来像(重要文化財,文化庁保管)とともに伝えられた十大弟子像。作者と推定されるのは常楽院創建のために土地を寄進した仏師,院賢で,同人は京都における平安時代以来の主流仏師の一派,院派に属し,13世紀前半の代表的仏師の一人としての活動が記録で知られている。上品にまとまった作風を示しており,遺品の少ない鎌倉時代の京都仏師の作例として貴重である。
(鎌倉時代)
・ 木造地蔵菩薩立像 一躯
【大きさ】像高91.2㎝
【所有者】宗教法人浄山寺(埼玉県越谷市野島32)
野島地蔵尊として知られる古刹の秘仏本尊として伝えられた地蔵菩薩像。肉付豊かな体?,深く鋭い衣文表現に平安前期の特色をよく見せ,定型化されない彫り口から9世紀前半に遡る可能性が考えられる。奈良笠区薬師如来像(重要文化財)と作風が類似し,畿内よりもたらされたと推定される。当代の優品であり,また地蔵菩薩像の屈指の古例としても重要である。
(平安時代)
・ 木造不動明王坐像(天野社護摩所旧本尊) 一躯
【大きさ】像高86.2㎝
【所有者】宗教法人法住寺(石川県珠洲市宝立町春日野83-15)
明治初年まで高野山の麓にある天野社(丹生都比売神社)の護摩所本尊として伝来した不動明王像で,14世紀初め頃の作と見られる。当時, 霊験仏として知られた京都東寺西院の国宝不動明王像(9世紀)の模像で,歯に水晶を嵌める技法に特色がある。鎌倉時代における霊験仏信仰との結びつきによりこの種の技法が用いられた例として注目される。
(鎌倉時代)
・ 木造十一面観音立像一躯
【大きさ】像高42.2㎝
【所有者】宗教法人世界救世教(静岡県熱海市桃山町26-1)
MOA美術館保管
白檀による十一面観音の造像規定に従いつつ,代用材として針葉樹を用いた十一面観音像で,法隆寺北室院に伝来した。作風は同寺伝法堂東の間の木心乾漆阿弥陀三尊像(重要文化財)の両脇侍など当代の官営工房系の作例に類するが,一部に鑑真のもたらした新様が加味され,製作年代は760~770年
代頃とみられる。奈良時代の木彫像の一例として貴重である。
(奈良時代)
・ 木造十一面観音立像一躯
【大きさ】像高122.4㎝
【所有者】公益財団法人岡田文化財団(三重県三重郡菰野町大羽根園松ヶ根町21-6)
パラミタミュージアム保管
興福寺禅定院観音堂の本尊であったが,明治初年の廃仏毀釈で寺外に流出した。快慶の弟子筋の仏師,長快の作で,建保7年(1219)に長谷寺本尊が焼け,快慶がこれを再興した際に用いた材の残りで造られたことが記録により知られる。右手に錫杖を持つのは長谷寺本尊の図像で,長谷寺現本尊像(天文7年=1538,重要文化財)は他にも本像と一致する形式が各所に認められ,再興にあたり本像の形姿が参照された可能性がある。当時の造像作法や長谷寺本尊の再興事業を考える上で重要な作例である。
(鎌倉時代)
・木造菩薩坐像二躯
【大きさ】像高伝文殊30.1㎝ 伝普賢31.4㎝
【所有者】宗教法人清泰寺(大阪府枚方市長尾元町1-11-10)
三尊像の両脇侍として造られたとみられる一対の菩薩像。その作風や凝った髪の結い方,著衣法に平安前期の特色を顕著にみせ,九世紀前半ないし半ば頃の製作とみられる。面貌や身体構成は奈良国立博物館薬師如来像(国宝)に通じ,同系の作者の手になると推定される。平安前期彫像の優品である。
(平安時代)
・木造降三世軍荼利明王立像二躯
【大きさ】像高降三世158.0㎝ 軍荼利158.9㎝
【所有者】宗教法人尊延寺(大阪府枚方市尊延寺6―11―1)
五大明王のうち2体が残ったものと見られ,11世紀前半の中央仏師の手になる作例である。両者は作風が異なるが,大きさや細部の特徴的な形式が一致するところから本来の一具と考えられる。軍荼利明王はこの時代の作例として極めて製作が優れ,左足を蹴上げる特徴的な図像も注目される。いわゆる和様の彫刻様式が成立する時期における重要作例である。
(平安時代)
平成28年4月19日(火)から5月7日(土)に「平成28年新指定国宝・重要文化財」が東京国立博物館で開催されます。
取りあえず調べたところ、浄山寺の地蔵菩薩立像と枚方市の2つのお寺の像は上野にいらっしゃるようです。
参加予定者