実の祖母の話ではありません。

私が以前勤務していた病院での話です。

そこではかなり重いアルツハイマーのおばあちゃんが毎日通所リハビリに来ていました。

病院の車の送迎ではとても無理な病状でした。

それでご主人様が高齢にも関わらず運転免許を取得して、リフト式の車を買って病院まで送迎されていました。

他の皆さんと同じメニューをこなせないので職員に連れられながら広い病院内をよく歩いていました。

そのおばあちゃんはなぜか私を見つけるとニコニコして「先生~、先生~、先生~」 と寄ってきてくれました。

私も何だかわからない話を聞きながら何故か波長が合って楽しく会話にならない会話をしていました。

ある時は「チューして」などと言われ、ちょうど横を通った家内がその言葉を聞いて驚いて走り去っていきました。

あとで「私とM子さんとどっちが大事なのよ」と筋違いな質問をされてしまいました。

また、ある日は私の手の甲にチューをしたこともありました。

面と向かって「好き」とも言われました。

ご主人のお若い頃にでも似ていたのか、おばあちゃんも太り気味だったので同じ種類の人だと思ったのか本当に気に入られました。

付き添いの職員も私を見つけるとすぐに「M子さんの好きなもぐじさんが来たよ」と言うので、忙しくても近くに行って会話にならない会話をしながらもお互いにニコニコしながらいつも別れていました。

そんなM子さんが私が入院して2日後の9日に家内の勤務先の病院で亡くなったそうです。

その話を聞いて、M子さんとの楽しかった思い出がたくさん頭に蘇ってきました。

まだまだ先ですが、向こうの世界で再開して「なぜ、私のことが好きだったの?」と聞いてみたいです。

驚くような回答だったらどうしよう?と今からドキドキしています。


それにしてもご主人様は本当に献身的に介護をされていました。

通所リハビリに来ない土日は広い庭で二人でゆっくり過ごしていらしたようです。

おばあちゃんのご冥福をお祈りすると共にご主人様が虚脱感で身体の具合が悪くならないことを願っています。

おばあちゃん、私に元気をくれて有り難う。