
本日の愛しきガラクタは、ハートのついたスニーカー形のペンダント・ヘッド。
10年前にオースティンに引っ越してきたとき、地元のランニング大会情報はどこで得られるのだろう?と迷った。
日本に住んでいた頃は、ランニング雑誌に全国の大会情報が網羅されていたのだが、広いアメリカ、全国誌の雑誌では、ローカルな大会全ては到底カバーできない。
そして見つけたのが、RUNTEX。
ここのサイトには、地元の大会情報はほぼカバーされており、エントリーした大会のゼッケン交付はこのRUNTEX店舗という大会が多かった。
多くの地元大会のスポンサーに名を連ね、更には、オースティンの皇居ともいえる街のジョギングコースのメッカに無料で水タンクを毎日設置してランナーに貢献していた。
オースティンのランナーならここは避けて通れないであろう、オースティンのランニングの中心基地。
それがRUNTEXだった。

それがこの10年、少しづつ地図が書き換えられていく。
RUNTEXが店舗数を広げていくと同時に、他のランニング店が複数オースティンに出現してくる。
大会のスポンサー提携が、RUNTEXから他の店がメインになっていったり、ゼッケン交付が他の店で行われたり。
そして先月、私が「オースティン・ランナーのハブ」と位置づけていたメインの店舗が、賃貸料不払いのため差し押さえを受けるというニュースが飛び込んできた。
更に気がつくと、別の店舗は既になくなっており、質屋に店舗を譲っていた。

(これに気がついたのが、ここが過去RUNTEXがスポンサーしてきた10km大会のコース沿いであって、大会を走っていて気がついたというのも皮肉なものである。)
かつて、「ココへ行けばオースティンのランニング情報は満たされる」と頼りにしてきた場所がなくなる。
時代の流れは、淋しい。
そして今日は、その差し押さえ物件の強制競売日。
差し押さえが実行された際に店内にあった物は全てオークションにかけられ、売上金で滞納賃料等の支払いに強制充当されることになる。
店内にあったもの全て。
商品だったランニング・シューズや衣料の山はもとより、ランナーに貢献してきた水タンクや車両、店のネオンサインや棚什器まで、全てが出品される。
その中には、大会記念の品やらオーナーに寄贈された感謝の品など、例えば「ランス・アームストロングのサイン入りイエロー・ジャージ」や「ブッシュ大統領が911後使用したシューズ」などというものも含まれる。

オーナーは「ブッシュの靴は自分にとって意味が大きかったので、このような形で手元を去っていくのは悲しい」とコメントしていた。
オークション開始前に現れたそのオーナー、並べられたこれから競売にかけられる想い出深い品々を眺めていて、父親が亡くなった際に棺を包んだ星条旗が並んでいるのを見つけた。
ブッシュの靴は彼の手元を離れていくが、この父親の星条旗は、その場で交渉し、競売に掛けられずに彼の手元に戻されることが許された。
そんな、「店内にあったもの全て」の競売。
「じゃあ、アレもオークションか?」と個人的に気になったのが・・・
ここの店内の天井に飾られていた数々の大会参加記念Tシャツ。

(2010年に撮った写真)
地元オースティンのものに限らず、ニューヨークマラソンやら、全国各地の大会のものが誇らしげに飾られていたのだ。

(これも2010年に訪れた際に撮影した写真)
で、これらもやっぱり「天井のTシャツたち」と一括され、しっかりオークション出品リストの一品として名を連ねていた。
盛者必衰。
時代は変わる。
オースティンに10年。
新参者の私を助けてくれたRUNTEXが、消えていく。
BGM「さよならの向こう側」山口百恵
♪涙をかくし お別れです