三浦しをん『ののはな通信』 | 舞台は命のみなもと 桂のブログ

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三度の飯より生の舞台が好き。劇場で開幕を待つ間の高揚感がたまりません。心揺さぶる演者の芸に酔いしれながら客席に身を置く喜びを味わっています。舞台は演者とお客の魂と魂の交流。私の命のみなもとです。



本屋さんに平積みになっていた
三浦しをんさんの小説を
立ち読みしていたら

止まらなくなったので購入し、

寝る間を惜しんで
一気に読みました。

女子校に通う同級生だった
『のの』と『はな』の
手紙のやりとりだけで
綴られている物語。

外交官の妻となり
海外で暮らすはなと
フリーライターとして独立し
猫と暮らすのの。


『のの』と『はな』が
それぞれの人生を歩みながら
40代を迎える頃までの
往復書簡を
まるで他人の手紙を
盗み見するみたいに
ドキドキしながら読みました。


家庭とか学校という容れ物は
窮屈だしウザいながら
子どもを守る箱でもある。

子どもを守りきれない
親や教師もたくさんいるけれど、

とにかくその箱から外に出て
オトナコドモな半端な時期を経て、

今度は自分で自分を守ったり

自分が誰かを守る立場になったり

パートナーと出会って
支え合って歩いたり

親に代わる保護者の元で
庇われながら生きたりする。


本当の自分とはなんぞや?とか

本当にやりたいことって何…とか

考えても答えは見つからず
見通しの悪い森の道を
手探りで進み
気づいたら40代になっていた自分と
『のの』や『はな』を
重ね合わせたり、

20歳頃まで手紙のやり取りをし
やがて疎遠になり
消息も分からなくなった友達との
思い出が蘇り、
あれから彼女はどう生きたのかなと
考えたりしました。


言葉で思いを伝えようとしても
その解釈は読み手に委ねられ
書き手の気持ちのとおりに
伝わるとは限らない。

誰かに向けて書く手紙も
結局は、
自分と向き合い
自分の気持ちを
確かめる行為なのだなと思います。

私が人生の手応えを感じ、
喜怒哀楽の面白味を
本気で味わい始めたのは
40代になってから。

『のの』や『はな』に
心の中でエールを送りながら
ちょっと切ない気持ちで本を閉じ、

私の人生最後の物語を
どう描こうかと考えながら
深い眠りにつきました。