毎年、六月初めに行われる筒井町天王祭は、私がどうしても見逃せない祭です。
宵闇に浮かぶ提灯を揺らしながら湯取車、神皇車の二台の山車が、無病息災、家内安全を願って町の通りを曳行(えいこう)します。
喪中なので神社への参拝は控え、山車に付いて歩きながら、要所、要所で披露されるからくり人形の奉納や、曳き手の息の合った山車の引き回し、迫力満点の力比べに今年も魅了されました。
夏に向けて疫病や自然災害が起こらぬよう牛頭天王に祈願するこの祭は、江戸初期から始まった伝統行事。
秋の名古屋祭にも市内の山車が揃って曳行しますが、私はやはり、地元で代々、継承される初夏の祭礼が一番、好きなのです。
互いの健闘を讃え合い、山車が二手に分かれてゆっくりと帰る様を見送りながら、興奮と安堵と、舞台の幕が下りた後のような不思議な刹那さを感じるのでした。