市役所に潜伏していた時期があった。
まともな勤務経験が無いので、職に就いていた期間を「潜伏」と呼ぶことにしている。

 

いろんな役所があるので、絶対!!とは言い切れないが、窓口対応している職員は、だいたいが「期間契約雇用」だ。正規職員でさえ内容を理解していない、または聞いたことがない制度がたくさんある。契約職員は知識ゼロの状態で窓口対応、または電話対応を強いられる。
役所関係の手続きはややこしい。記述欄は多いし、同じことを何回も書かなきゃいけないし、書類も多い。正規職員も稀なケースに当たるとテンパって、どこかに電話して質問したり、分厚い資を持って来たり、助けに入った職員もパニくって、職員数人でバタバタしている姿をよく見かける。そういう状況下にあるとき、新規期間契約職員はフロアで繰り広げられているドタバタ劇を不安いっぱいで見つめるしかない。

 

私は総務課に潜伏していた。仕事は電話対応がメインになる。市民の問い合わせ内容に応じた課に内線を回す。んで、この電話対応がめちゃくちゃ難しい。
事前に渡された資料は、市民に配布されるガイドライン一冊のみ。どこの課で何の対応をしているのかが記載されているページは3ページくらい。なので対応している業務の「一部」しか記載されていない。書籍の目次かな??くらいのボリュームしかない。

 

「分からないことがあったら、何でも聞いてね」「電話対応で困ったら、大きい声で、~についてなんですけど!!って叫べばすぐに誰かが教えてくれるから」など、初顔合わせのときに周りの職員様方に言っていただいたので、その時は少しリラックスできた記憶がある。”その時”は。

三日目くらいだったかに電話対応を任された。分からないことがあったら何でも聞いた。
結果、ブチキレられた。


3ページだけの課の対応一覧表に、補足をどんどん書き加えていく。収まりきらないのでオリジナルを作成。中身が増える増える。急いで覚えなければ。分からなくてどうしようもないときにしか質問してはいけない。自分でなんとかしなくてはいけない。ダメだ、分からない、電話の相手をこれ以上待たせてはいけない。でも聞いたらダメだ。でももうどうしようもない。
「す、すみません。教えてください」
ものすごく胃がきゅーっとなった。身体は常にガッチガチに硬直状態だ。
めんどくせぇオーラを惜しみなく発し、手に重りでもついているかのように受話器を持ち上げる正規職員の皆様方。
「あなたの(教育)担当は誰でしたか!?」えぇ・・・。あんたコーヒー飲みながら携帯でメール打ってるだけじゃん・・・。パソコンだってマウス動かすくらいしかしてないじゃん。アドバイスくれたっていいじゃん・・・。

 

・・・・・・・わかんねぇことしか無いんだが。

 

市町村合併で離れた所にも庁舎がある。庁舎間での書類や郵便物の交換をする、「使送」という仕事がある。代表として記載されている所在地が私のいた所なので、他の庁舎にある課への郵便物も届くので、それを持って行ったりした。
預かって帰ってきた書類を各課の担当者に配って回る。宛名の無い封筒があった。厚みがある。確認してみよう。CDのケースがめっちゃ入ってる。何かのデータなのか。中に宛名が同封されているのか。ん??ディスクに某会いに行けるアイドルグループ名が書いてあるぞ。いたずらなのか??よし、教育担当者に聞いてみよう。
「それね、○○さん宛て。アイドルが好きな人があっちにもいるから、お互いに貸し借りしてるんだよ」
へぇ・・・・・・・・。個人的なやり取りも使送でできるのか。もはや良いのか悪いのかさえわからねぇ。

 

・・・・・・・わかんねぇことしか無かった。

 

勤務中にエロゲやってる職員様を目撃したときは、ブチキレても良かったのかもしれない。

 

「挫折の数だけ強くなる」

 

誰だよ、んなこと言ったのは。
挫折するたびに脆くなっていくじゃねぇかよ。
もはや骨粗しょう症だよ。
全身粉砕骨折だよ。

カルシウムとビタミンDください。

もう疲れたよ・・・パトラッ・・・・・・シュ・・・・・・・・・・・。


自分にはまだまだ可能性がある。その数は無限だ!!
お前の実力はこんなもんじゃねぇ!!
立ち向かってやろうじゃねぇか!!
見せつけてやれよ、お前の真の力を!!

 

中年になってもこんなこと考えてました。

 

どこぞの英雄気取りっだったんですかね。
うん、あのー、いやぁ、うん、そのぉ、ね。普通に恥ずかしいです。
偉人の名言とか読んで奮えたって無理ですよ。
だって凡人だもの。


「挫折の数だけ強くなる」に逆切れして申し訳ない。
自分、ただの凡人っす。