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入院する前日、最後に食べたのは小玉スイカだった


タネは食べるタイプの人間です。


その日から約8ヶ月間固形物を口に出来ない日々が続いた。


栄養分は高カロリーの点滴



で補っているので空腹感は無いのだが、食べたいと言う欲求に最後まで苦しめられた。


口からの摂取が許されたのは、水、お茶、残渣の少ない単純なスープ(鶏がらスープなど)、飴


初めのうちは痛みなどで食欲は気にならなかった

しかし数日すると食べ物が気になり出した。


塩味のある美味しいものが食べたい。

肉や魚のタンパク質を噛みしめたい。


テレビのグルメ番組やYouTubeの飲食動画を見まくった。


無意識に口がモグモグ動いたりヨダレが出ていることに気がついて泣きたくなった。


食事の時間に廊下に出て配膳用のワゴンを食い入るように見つめていた


毎日見る夢は何かを貪り食っている夢

はっ、として目が覚める。


体重は95kgから53kgまで減少した。


急激に痩せたので皮はたるみ鏡の中に地獄の餓鬼がいた



食欲に負けそうになりながら精神状態を保つために「治ったら食べるものリスト」をつけた

その数は100を優に超える。




リスト冒頭は鰻や寿司など定番が並ぶが、途中からは納豆、たくあん、冷奴など思いついたものを全部書いた


摘出手術が終わって食べられるようになった今

改めて見るとそこまで食べたいと思わなくなっているのが不思議だ。

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