まだ十月だというのに、夜になるとさすがに肌寒い。
締め切りに追われ、二階の部屋で仕事をしていたがストーブをつけようか迷っていた。それとも夜食でも食べようか・・・
「ちょっと来て!急いで!大変なの!」突然、母が叫びだした。
23時32分、母の叫び声で時間を見た。
普段ならとっくに寝ている時間だ。
ガウンを羽織り、階段を下りていくと「おじいさんが、息をしていない」と言いながら私の袖口をつかむ母。
「息をしていないって、何かしたのか?」
「そんなわけないでしょう。夕飯も食べなかったから様子を見に来たの」
ともかく、救急車だな。死んでいるようだから乗せてくれるかどうかわからないけど・・・
「はい、119番です。消防ですか?救急ですか?」
「おじいさんが、息をしていないのですが」
「心臓は動いていますか?」
「え?心臓?・・・ 動いていないようです」
「わかりました。救急車を行かせます。それで、心臓マッサージはできますか?」
「大体はわかりますが・・・ ここでやるのですか?」
「そうです。ほかにできそうな人はいますか?」
「いや、年寄りだけですので無理です。」