【古事記の世界】国生み神話ー水蛭子と淡島 | 東風友春ブログ

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古代史が好き。自分で調べて書いた記事や、休日に神社へ行った時の写真を載せています。
あと、タイに行った時の旅行記やミニ知識なんかも書いています。

 

伊邪那岐命と伊邪那美命は、オノゴロ島に天降り、子作りに取り掛かります。

 

かく期りて、すなはち 「汝は右より廻り逢へ、我は左より廻り逢はむ。」 と詔りたまひ、約り竟へて廻る時、伊邪那美命、先に 「あなにやし、えをとこを。」 と言ひ、後に伊邪那岐命、 「あなにやし、えをとめを。」 と言ひ、各言ひ竟へし後、その妹に告げたまひしく、 「女子先に言へるは良からず。」 とつげたまひき。然れどもくみどに興して生める子は、水蛭子。この子は葦船に入れて流し去てき。次に淡島を生みき。是も亦、子の例には入れざりき。

(岩波文庫「古事記」ー伊邪那岐命と伊邪那美命2 二神の結婚)

 

そして、二神が契りを結び、初めて産まれた子が水蛭子(以下、蛭子神)です。

しかしながら、蛭子神は不具の子であったためか、二神の意に沿わず、船に乗せて流されてしまいます。

日本書紀の本文(及び第二の一書)では、若干登場場面が異なるのですが、日の神や月の神に次いで蛭子神を生みます。

日本書紀では、船に乗せて捨てられてしまった理由に、蛭子神が三歳になっても足で立てなかった記載が見られます。

 

次に蛭児を生む。 已に三歳になるまで、脚猶し立たず。 故、天磐櫲樟船に載せて、風の順に放ち棄つ。

(岩波文庫「日本書紀(一)」神代上 第五段)

 

こうして流された蛭子神が流れ着いたという伝説は日本各地に残っています。

代表的なのは、全国のえびす宮の総本社として知られる西宮神社でしょう。

 

西宮神社

所在地 兵庫県西宮市社家町1-17

    https://goo.gl/maps/iiUpfzTbMXw

主祭神 えびす大神

公式サイト http://nishinomiya-ebisu.com/index.html

 

西宮神社の由緒を要約して説明すると、昔、鳴尾村の漁師が和田岬の沖で夜漁りしていると、奇しき神像が網にかかった。

漁師は不思議に思って家に持ち帰り、神像を大切に祀りました。

ある夜、その漁師の夢に蛭児神の御神託があって、教えに従って神像を西の宮地にお遷しし、鎮め祀ったのが現在の西宮神社の起源であるとされています。

 

 

 

えびす神像(京都市 恵比寿神社)

 

えびす(恵比寿・夷・戎)を蛭子神と同一神であるとした思想や信仰は、始めはこの神を外国の神だと思い「えびす神」と名付けて呼んでいたが、後になって伊邪那岐命と伊邪那美命の御子であり海に流された蛭子神と結びついたものかと思われます。

 

蛭児とは西宮の大明神、夷三郎殿是なり。此御神は海を領し給ふ云々

(「西宮神社史話」所収「神皇正統録」)

 

海に流され人々に忘れ去られた蛭子神が、突然海中から現れたことで漁師たちの海の守護神として崇められ、豊漁の神として熱狂的に全国に広まっていきました。

日本の海岸部にえびす神を祀る神社が多いのはこのせいです。

 

一方、蛭子神に次に生まれ、同じく子の類に入れられなかった淡島とは、淡路島と和歌山県の間に位置する友ヶ島の神島をあてる説があります。

前回のオノゴロ島の記事で仁徳天皇の歌を紹介しましたが、ここに自凝島と並んで淡島も登場するのです。

 

おしてるや 難波の崎よ 出で立ちて わが国見れば 淡島 自凝島 檳榔の島も見ゆ 放つ島見ゆ

(岩波文庫「古事記」 仁徳天皇2 皇后の嫉妬・黒日売)

 

淡島が淡路島から眺められた事と、和歌山市加太の淡嶋神社の旧鎮座地は神島にあって、社伝にも仁徳天皇が登場し、天皇が神島から社を遷座させた話と合わせると、神島の旧名は淡島だったのではと思えるのです。

 

淡嶋神社

所在地 和歌山県和歌山市加太116

    https://goo.gl/maps/y6jnPfxsU1x

御祭神 少彦名命、大己貴命、息長足姫命

延喜式 紀伊国名草郡 加太神社 式内論社

公式サイト http://www.kada.jp/awashima/

 

和歌山市加太の淡嶋神社は全国の淡島神社や淡路神社の総本社とされています。

社伝によれば、少彦名命と大己貴命の祠が加太の沖合いの神島に祀られたことが始まりとされ、三韓出兵の帰途海上で突然の嵐に遭遇した神功皇后が、船中で祈りを捧げたところ、「船の苫を海に投げ、その流れのままに船を進めるように」とのお告げによって流れのままに友ヶ島に漂着し、無事を感謝して二神に宝物を奉納されました。

その後、神功皇后の孫である仁徳天皇が友ヶ島に狩りに来た際、その故事を聞き及び、島では何かと不自由であろうと考え、社を対岸の加太に遷されたことが淡嶋神社の起こりだとされています。

 

 

神島は友ヶ島のうち沖ノ島に寄り添うように浮かぶ小島です。

友ヶ島は、沖ノ島に残存する旧軍の砲台跡が「天空の城ラピュタ」のようだと、近年人気のスポットになっています。友ヶ島は無人島ですが、沖ノ島へは加太漁港から船が出ており、沖ノ島に着けば神島を眺める地点まで歩いて行くことが可能です。

 

神島(友ヶ島)

所在地 和歌山県和歌山市加太

    https://goo.gl/maps/iZ5C1V9qYt82

友ヶ島汽船 http://tomogashimakisen.com