【古事記の世界】国生み神話ーオノゴロ島 | 東風友春ブログ

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故、二柱の神、天の浮橋に立たして、その沼矛を指し下ろして画きたまへば、鹽こをろこをろに画き鳴して引き上げたまふ時、その矛の末より垂り落つる鹽、累なり積もりて島と成りき。是れ、淤能碁呂島なり。

(岩波文庫「古事記」ー伊邪那岐命と伊邪那美命1 国土の修理固成)

 

伊邪那岐命と伊邪那美命の共同作業で、初めて登場するのが淤能碁呂島(以下、オノゴロ島=日本書紀では磤馭慮島)です。

伊邪那岐命と伊邪那美命は、その後日本の島々を生み出していきますが、オノゴロ島に関しては比定地がどこなのか、実在の島なのかどうかすら分かっていません。

オノゴロ島の比定地については様々な説があるようですが、オノゴロ島に関して最も古い言及は、「古事記」に書かれた仁徳天皇の歌の中にあります。

 

おしてるや 難波の崎よ 出で立ちて わが国見れば 淡島 自凝島 檳榔の島も見ゆ 放つ島見ゆ

(岩波文庫「古事記」 仁徳天皇2 皇后の嫉妬・黒日売)

 

この歌は仁徳天皇が淡路島にて詠まれた歌とされていますが、ここに自凝島(オノゴロ島)が登場します。

残念ながら仁徳天皇が淡路島のどの場所で詠まれたのかは伝わっていません。

「淡島・自凝島・檳榔の島」が淡路島から見えるどの島を指すのか、これも諸説あってハッキリしません。

しかしながら、もし仁徳天皇がこの歌を実際に淡路島から見た風景を詠んだのだとしたら、この時代にはまだ、特定の島に「オノゴロ島」の名称が残っていた可能性があります。

つまり、オノゴロ島は実在の島だったということになります。

 

今、淡路島の西南角にある小島なり。俗になおその名を存すと云う。或る説に、淡路国の東、由良駅の下に在り。或る説に、淡路紀伊両国の境、由理駅の西方の小島云々。

(国史大系所載「釈日本紀」述義一神代上 磤馭盧嶋 ※原文訓み下し)

 

日本書紀の解説本である「釈日本紀」を見ると、オノゴロ島の比定地を、淡路島西南の小島か、淡路紀伊両国の境の小島の二説をとっています。

「淡路島の西南角にある小島」とは、現在の沼島だと思われます。

「淡路国の東、由良駅の下に在り。(中略)由理駅の西方の小島云々」については、おそらく伝聞による誤りがあって、正しくは「由良駅の東方の小島」だと思われます。淡路島と和歌山県の間に位置する友ヶ島(地ノ島、神島、沖ノ島、虎島の島嶼群)のことでしょう。

 

 

沼島は、淡路島の南西沖にある周囲9.53kmの小さな島。

島を上空から見ると勾玉のような形をしており、島の海岸沿いには奇岩が点在し、中でも「上立神岩」は神話の天の御柱を連想させて、沼島の象徴となっている。

また、沼島には地元で「おのころさん」と呼ばれる神体山があり、その山には「おのころ神社」が鎮座しています。

 

おのころ神社(自凝神社)

所在地 兵庫県南あわじ市沼島73

    https://goo.gl/maps/Sa8Kz2b8otH2

御祭神 伊弉諾神、伊弉冉神、天照皇大神

 

沼島や友ヶ島以外にもオノゴロ島候補地は淡路島近辺にいくつかあって、例えば本居宣長は、その著書「古事記伝」の中で絵島説を紹介しています。

 

口訣には、「淡路の西北隅に小嶋なり」と云り。(中略)ある説に、後世歌によむ淡路の繪嶋これなり。日本紀に「磤馭盧嶋を以って胞と為て」とあるより出て、もとは胞嶋の意なりと云り。

(日本名著刊行会版「古事記伝 第一」古事記傳四之巻)

 

絵島は、淡路島の岩屋港にある小島。地質学的に珍しい約3500万年前の砂岩層が露出し、岩肌の縞模様が特徴的です。

 

絵島

所在地 淡路市岩屋字恵島884-4

https://goo.gl/maps/YhwKKMU1XKP2

 

淡路島には、南あわじ市にも自凝島神社があります。

自凝島神社は現在陸地にあるのですが、数千年前の縄文時代には周辺の平野部は水没していて、当地は海に浮かぶ小島だったという説があるそうです。

 

自凝島神社(おのころ島神社)

所在地 兵庫県南あわじ市榎列下幡多415番地

    https://goo.gl/maps/KUsaaaDSzM72

御祭神 伊弉諾命、伊弉冉命、菊理媛命

公式サイト https://www.freedom.ne.jp/onokoro/

 

その他、淡路島以外にもオノゴロ島比定地があるのですが、ここではその全てを紹介しませんし、何処が本当のオノコロ島なのかを推理するつもりもありません。

しかし、淡路島には国生みの神話に触れられる場所がいくつもあるので、古代の浪漫に思いを馳せながら、オノゴロ島伝承地を巡ってみるのも楽しいかもしれません。