偉大な大先輩が、またお亡くなりになってしまいました。


「たてかべ 和也」さん、通称‘‘かべ’’さん…享年80歳。


今から約7年前…

かべさんとは、平成版「ヤッターマン」で、初めてレギュラーをご一緒させていただきました。


当時、かべさんは、良く飲みに連れて行って下さいました。


みんなでワイワイ…まるで秘密基地へ行く少年のように、「もう一軒行こうぜ!」と、ワクワクはしゃぐかべさんは、とても70代のおじいさんとは思えませんでした。


大好物は餃子とピザ!


お歳とお身体を気遣い、私達がさっぱりしたおつまみを注文しようと思ったら大間違いです(笑)


かべさんはいつも、目線を合わせてお話をして下さる先輩でした。


私達30代と話をする時、私達から少し先輩の40代の皆様と話す時、同世代の方々と語り合う時…



かべさんとご一緒したのはほんの少しの間でしたが、私の中で、最もインパクトに残ったエピソードがあります。



ある日、いつもの飲み会の席で、ついつい自分の愚痴をこぼしてしまった私。


芝居がちゃんとできないこと。
歌がちゃんと歌えないこと。
ナレーションで失敗ばかりしていること。
自分をわかって貰えないこと。
私は声優の仕事をやる資格がないのではないかと思うこと。
人のせいにしたいこと。
もうダメだと思っていること。


etc…。



かべさんはずっと、笑顔で頷いていて、最後に、ひと言、こう仰いました。



『報告、ありがとね』


目の前でパチン!と手を叩かれたかのように、ハッとして、目が覚めた瞬間でした。


この、『報告、ありがとね』というのはつまり、

「自分で越えていかなければならないこと、自分にしか越えることのできないことには、何も言うことがない。全て自分次第」


私にはそう聞こえたのです。


私の勝手な解釈で、特に何も意味はなく、話のまとめで仰ったのかもしれませんが(汗)


その真相は、かべさんにしか分かりません。


しかし私がそう受け取ったのは、まぎれもない事実です。


その頃、ちょうどセクシーグラビアのお仕事を始めたばかりで、私について、先輩、同期ぐらいの皆様、後輩からは、賛否両論の声が上がっておりました。(今でも賛否両論ですが(^^;;)


かべさんは、まだ誕生したばかりで突っ込みどころ満載の

"セクシーすぎる声優たかはし智秋"

を応援して下さいました。


その上で、かけていただいた、この何ともいえない

『報告、ありがとね』


かべさんは、なぜ…肯定も、否定もせず、この言葉を私に仰ったのか。 



思えば、私は物心ついた時から世渡りが下手で要領が悪く、いつも貧乏くじを引くような子供でした。


今の私を見たら信じられないかもしれませんが、ものすごく太っていて、勉強もできず、声が変だといつもからかわれていました。


先生にも生徒にも虐められ、皺寄せは全て私が背負う毎日の中、大人になったら絶対キレイになって、コンプレックスを武器に変えて生きてみせる!そう強く心に誓い、早く大人になって、自由に羽ばたける日々を待ち望んでおりました。


自由ということは、自分で全て決めて生きていかなければならないという厳しい環境でもあります。そういう意味では、学生時代の方が楽に思える人もいるでしょう。


しかし、私は、何より自由を愛しています。


今でも自由を満喫し、ハッピーで充実した毎日を過ごしております。

それが私の幸せなのです。

損はするけれど運だけは良い!

本当にありがたい人生です!感謝感謝!



先ほど、私の存在は賛否両論…といいましたが、色々な立場の色々な方々が、私に色々なアドバイスを下さいます。



「人間はそういうものじゃない」
「君は間違っている」
「本当は寂しいんだよね」
「もう歳なんだからさ」
「将来どうするの」
「世の中もっと上手く生きなよ」
「媚びると得するのに」
「ずっとそんな風には暮らしていけないでしょう」


私のためにお時間を割いてご意見を下さるそのご縁と環境に、いつも感謝しております。


皆様からのご意見は、いつも心にしっかりと受け止めています。


受け止めることと、実行にうつすことは全く違います。


しかし…アドバイスをしたからには、そのアドバイス通りにしてほしい…


大概の人はそう思います。


私は、私の中で良いと思ったことは取り入れますし、いつでもトライしようと思っております。


決めるのは、全て私なのです。


私は、世界でたった1人なのですから。



そう…もしかしたら、かべさんは、こんな私のことをわかっていて、私に効果てきめんの助言を下さったのではないか。


教科書通りでステレオタイプの世論説教では、偏屈な私の心は動かない。


だから…


『報告、ありがとね』


という、なだめるわけでも、誉めるわけでも、説得するわけでもない、この言葉で、自らの輝き(長所)に気がつくよう、自由に、自然に導いて下さった…。



まぁ、真相は全くわかりませんが(汗)、こう考えると、かべさんは本当に、器の大きい、クレバーなお方であったと、ますます尊敬致します。



『報告、ありがとね』という言葉を聞いたその日から、私は、一切、人様に伝えてもどうにもならない愚痴は言わないようにしました。



最近、ブログやツイッター、SNSに、愚痴をばら撒く人が多くなっています。


アクセスすれば誰でも見られるところに、どうにもならない愚痴をばら撒くのはいかがなものか。


しかも、そのマイナス発言は、ハッピーな人にも、SNSなどでたまたま目に入ってしまったがために、伝染して悪い記憶を蘇らせてしまう(泣)


中には、人の不幸を楽しむ人もいるでしょう。


とは言いつつも、楽しみ方は人それぞれなので、何が正しくて何が間違っているのか、私にはわかりません。私が正しいと公言するつもりもありません。


逆に、見ず知らずの人だからこそ、憂さ晴らしで無責任に愚痴をばら撒けるのかもしれません。



そんな皆様に…


私はいつも、こう言える人間でありたい。



『報告、ありがとね』



それぞれの輝きに気がついてくれることを願って。



かべさん、本当にありがとうございました。



御冥福を心より御祈り申し上げます。



やすらかに。












                                      たかはし智秋