時は昭和十八年。 男手を戦争に取られて乗務員の確保が急務になった広島電鉄は、
「学業をしながら乗務員として 給料も貰える」広島電鉄家政女学校を設立。夢と希望を抱いて入学する14~15 歳の少女たち。
その中に島根出身の杏子もいた。
彼女たちは勉強のかたわら、車掌業務のための特別授業を受ける。食料統制のため常に空腹で、過酷な生活ではあっても、
女学生たちは友情をはぐくみ、お国のためと日々努力を重ねた。
杏子は幼馴染の真太郎にひそかに想いを寄せていたが、暁部隊にいる真太郎とはなかなか会うことができなかった。
そして一ヶ月の研修が過ぎ、車掌としてチンチン電車に乗務する事になる。少女たちは失敗を重ねながらも、
広島の交通を支える存在になっていき、やがて、わずか十五歳で運転手として働く事になる。
昭和二十年春。 戦況は悪化して、チンチン電車の乗客も出征兵や見送りの家族が多くなる。
女学生たちのもとにも家族の訃報が届いたり、疎開によって家族がバラバラになるなど、戦争が色濃く影を落とすようになる。
そして、杏子の恋人、真太郎もついに戦地へ赴くことが決まる。かつて愛国少女だった杏子は、
戦争の悲惨さをチンチン電車の窓から見つづけ、自分の考えが大人へと成長していく。
8月5 日の夜、女学生たちはいつか戦争が終わって、お母さんになったときの夢を語り合う。翌朝、その夢が無残に打ち砕かれると知らずに……。
8月5 日で終わっている杏子の日記。マユは祖父がどうして自分にこの日記を読んでほしかったのかわかった気がした。
学校では誰も教えてくれない出来事。でも誰かに覚えていて欲しかったことなんだと。
マユは誓う。「私は決して忘れない。」
このお話は実話を基に作られた作品です。
当時女学生が車掌・運転士をしていたことは長年知られていませんでした。
広島電鉄家政女学校の存在も。
幻の女学校と言われていました。
数年前にその事実がしられるようになりました。
8月6日の原爆投下の時にチンチン電車を運転していたのも女学生でした。
被爆死した家政女学校生は30名。うち8名は運転席で骨だけになって見つかったそうです。
きちんと広島に行って、自分の目でみて、聞いて、感じて、作品に向き合いたいと思ったので
行ってまいりました。弾丸詰め込み勉強旅行。
到着してさっそくチンチン電車に乗りました。
劇中に出てくる電停の名前が今もたくさん。自然と口ずさむ2人。
なかなか路面電車に乗る機会は少ないからとっても新鮮です。
長い車両の時は今でも車掌さんがいらっしゃいます。
こういう道を14.5歳の女学生が運転していたんだなぁ・・・と思いながら街並みを見ていました。
広島電鉄さんの本社へ。
本社、車庫のところにある慰霊碑にお参りさせていただき、
今回の公演誠意をもって携わらせていただきます、とご挨拶をしてきました。
そして、今も現役で走ることのある被ばく電車をじっくり見学させていただきました。
原爆投下時に走っていた車両。
原爆で半焼となるも翌年に復活し、そこから今まで走り続けている車両です。
車内は木でできています。
この部分も被爆当時のまま。
とっても貴重な見学をさせていただきました。
実際に女学生たちが乗務した電車に乗ってみることができて、
より身近に感じることができました。
小さい体で踏ん張って車掌を頑張っていた姿とか、こんな大きな車両にたくさんの人を乗せて
たくさんの人の命を預かる責任感と共に運転していた姿。
そのあとは広島電鉄家政女学校があったあたりまで歩いてみました。
ここは京橋川。劇中にも出てきます。
「シジミがとれる」京橋川。
この向かいに見えている大きな建物がある1角あたりが家政女学校でした。
今はユニクロやGUが入っている大きなショッピングモールになっていました。
そして、元女学生の方お二人にお話を伺うことができました。
この表紙の左側の方、笹口里子さん。
もうひと方は増野幸子さんです。
増野さんは2期生で運転士、笹口さんは3期生で車掌でした。
お二人のお話は本当に、当時の情景が目の前に見えてくるようで
もっと聞いていたい!と思うようなお話でした。
増野さんの運転に対する誇り、そして日々の生活で楽しかったこと、
お腹がすいたこと、乗務で疲れて授業中は居眠りをしていたこと、
運転する姿に夢中になる男子学生からラブレターをもらったこと、
こっそりデートをしたこと。
キラキラした目で運転している仕草を見せてくださいました。
笹口さんは車掌さんの失敗談や楽しかったこと、同級生とのいろんな出来事、
お姉さんが運転士、笹口さんが車掌で同じ電車で姉妹で勤務したこと。
チンチンチンと鳴らす鐘の音で合図しあったこと。
たくさん笑いながらいろんなお話を伺いました。
そして、原爆投下時のこと、投下後のこと。
お二人の生々しい記憶に、今までテレビや本でしか知ることのなかった出来事が
目の前にあらわれました。
お二人の体験されたことは『チンチン電車と女学生』原作のほかに
現在発売中の『被爆電車75年の旅』という本にも書かれています。
ぜひ、読んでみてください。
さすらいのカナブンさんが、おばあさまと増野さんの体験をもとに漫画を描かれています。
今、この
『チンチン電車と女学生』という作品に携わるチャンスを得られたこと、
こうやって学ぶきっかけとなったこと。
本当にありがたく思います。
ぜひたくさんの方に観に来ていただきたいです。
この作品は、戦時下のお話ではありますが、恐ろしい描写はほとんどありません。
脚本の高橋知伽江さんがおっしゃっていました。
「『戦争』が圧倒的な闇なので、この作品では光の部分を表現した」と。
その時代に、一生懸命生きた、キラキラと輝く女学生たちの姿を通して
72年前に起きた出来事を感じていただければと思います。
とにかく、まずみなさんに知っていただきたいです。
チケット受け付けております。
2017年12月2日(土) 13:00/18:00
12月3日(日) 13:00(残席少ないです)
※開場は開演の30分前
会場 東京芸術劇場プレイハウス
※A席・学生割引(高校生以下)は東京芸術劇場のみの販売
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