M病院に到着すると、まず、受付に向かった。
小児医療の専門病院なので、
色々な症状を持った患者さんに出逢う。。
普段は気づかなかったけど、
世の中には見えていないだけでこんなにも
自分自身と闘っている人たちがいる・・・
自分の無知で、世間知らずなところが
急に恥ずかしくなったのを覚えている。
受付には、大きな油絵が飾られていて、
よく見ると、私が学生時代、東京の藝術大学を目指して
日本画やデザイン、デッサンを習っていた
恩師Y先生の作品が凛とした姿でそこに在った。
私は、思わず、「Y先生・・・」つぶやいた。
Y先生は、ちなみにもうこの世にはいない。
戦時中の今の東京藝術大学で油絵科をご卒業後、
滋賀の国立大学の教育学部で長年、
美術の教授をされていた方だ。
先生の自慢エピソードといえば、
「彫刻家佐藤忠良とその大学当初からの大親友だ。」
ということ。
私も大学での志望専攻が彫刻家だったため、
よくよく佐藤忠良さんの作品や凄さは知っていたし、
日本で最初に大英博物館で作品を披露した人。
私の地元の佐川美術館では、佐藤忠良彫刻作品の常設もある。
みなさんが身近に感じるところで言うと、
【大きなかぶ】の絵本の絵を描いた人、だろうか。
彫刻家であり、ある種の画家でもあるのだ。
そんな学生時代の記憶が、その何秒かの瞬間に、
ふっとよぎった。
受付で、息子の手をひきながら、
息子の受付に必要な記入事項を書きながら・・・
「まるで、ここに導かれてきたみたいだ」
そう感じた。
10へ続く
