結婚する前も、してからも

夫の髪を私が切っていた。

バリカンと、ハサミと、スキバサミを使う。


私は割とそういう事が得意で、人から見ても

家で切ったと気付かれないくらいには切る事ができる。


学生時代は美術を学んでいたので

大学のアトリエで友人に頼まれて髪を切るとか

家でも父の散髪をしてあげたりしていた。


夫も、パーマをかけるとか以外の時は

私が切ってあげていた。



結婚生活の中で何度も髪を切ったけれど、

夫はありがとうも言わないし

切った髪を片付けることもしなかった。


夫は黙ってシャワーをあびに行って

切った髪を洗い流す。

その後はもう自分の時間に戻る。



私は、ケープの毛を払って

ハサミもきれいにして

床に敷いたシートや、床にも落ちてしまった髪の毛を掃いたり掃除機をかけたり。


まだ、2人だった時はよかったけれど

子供が生まれたりして

だんだんと苦痛になっていった。



髪を切ること自体より、夫のその態度に。

ありがとうって一言あってもいいのに。

髪の毛の片付け一緒にしてくれたらいいのに。



嫌な顔をされたり舌打ちされるのがいやなので、

私も何も言わなかった。

心の中でだけ、どんどん嫌悪感がたまっていった。



私が夫の髪を切って

夫がソファに寝っ転がってスマホを見てる間

せっせと片付けをしているのに

何とも思わないんだなぁと思っていた。



息子の髪も私がずっと切っているけれど

たまに夫は自分のあとに、

「○○(息子) も髪切ったら?」と息子に向かって言ったりした。


息子に向かって「切ったら?」って。

私に「切ってあげたら?」ならまだわかる。


私、お店の人じゃないんだけど。

ボランティアでもないんだけど。


と思った。


お金をもらって仕事でやっているお店の人の方がずっといい。

自ら進んでやっているボランティアならまだいい。



引っ越す半年前くらいからは

全く会話もなくなって、さすがに、散髪は頼まれなくなった。



ある日、夫は美容院で髪をカットして帰ってきた。

もちろん、帰るコールやLINEはなく、

19時頃だったので子供も私もリビングにいて

早く帰ってきたことと、何年ぶりかによそで髪をカットしてきたことに少し驚いた。



黙ってリビングにはいってきた夫に

3人ともおかえりくらいは言ったけど

誰も髪を切ったことにはふれなかった。



そのあと、夫は急にこまめに美容院に行くようになりパーマをかけてきたり、サイドを短く刈った今風なスタイルにしてきたりした。



子供は私のところにきてヒソヒソと

お父さんまた髪切ったね!と言いにきたりした。



初めは、何だかザワザワして

うしろめたいような気持ちにもなった。

悪く思われていると思って、怖かった。



美容院に行くようになってから

ネットで買ったでヘアセット用のワックスやら

ヘアケア用品、夫が使うシャンプーなどもぞくぞくと届いた。



そのくらい、勝手にすればいいと思ったけれど

また、箱やダンボールを捨てるのは私。


でも、ありがとうの一言もないのに散髪をさせられるよりはましだった。