あまり感情を表さない母が、
記憶にある限り思いうかぶ嬉しそうだった時。
小学5年生の時、学校の学芸会の演劇で
先生から指名されて主役に決まった時。
「すごいじゃない」と、声をあげて喜んでいた。
大学に推薦で合格した時。
成人式の前撮りで着付けが終わって
部屋から出てきた時。
「Chii、きれい」と嬉しそうだった。
小さい頃の事は覚えていない。
記憶にあるのは、その3つだけ。
母の日に選んだネックレスは、
喜んでくれると思ったのに反応がいまひとつだったし、
一度もつけているのを見たことがないので
アクセサリーにしたことを後悔した。
結婚するといった時も
「よかったね」とか「おめでとう」とか、そういう言葉はなかった。
反応がよくわからず、嫌なの?と思った。
息子を妊娠したことを電話で知らせた時も
たいした反応はなかった。
この人は冷たい。親子でも別の人。と自分に言い聞かせても
毎回傷ついてしまう。
まだ優しい言葉を期待している自分に驚いてしまう。