ルパン三世 「ダイナーの殺し屋たち」


 久方ぶりの今年最後の更新は大好きな押井守監督が脚本に携わったルパン三世 Part6 の第5話「ダイナーの殺し屋たち」についてのお話です。

 こちらはヘミングウェイの短編、「殺し屋」から着想を、というよりもオマージュしたお話となっており、映像のそこかしこにもヘミングウェイを彷彿とされる絵が溢れている、大変好みの作品でした。

 ご本人の雰囲気はむしろ宮崎駿監督のお話に出てきそうな優しい話し方なのに、作品は素晴らしく鋭く真剣な押井監督に惚れ込んだのは小学校高学年の頃でした。
 何を思ったのか、攻殻機動隊アニメシリーズから、イノセンス、GHOST IN THE SHELLに流れ、映像美と世界観、哲学的な思考回路に魅了されたのは懐かしい記憶です(笑)

 その押井監督のルパンを録画予約をして楽しみにしながら、いつも通り夜に読書に勤しんでいたところ、なんとピンポイントに「殺し屋」を読んだ日に「ダイナーの殺し屋たち」が放映されておりました!

 「この世に偶然なんてないわ。あるのは、必然だけ。」

 というxxxHOLiCの侑子さんの台詞を思い出してしまったのは、私の都合の良い思考回路かそれとも……。

 さて、そんな嬉しいタイミングでのルパン×押井守×ヘミングウェイとなれば、記事にしない訳にはいきません。

 例によって例のごとく、私にしか需要のない記事になろうとも本望!と開き直ってまとめさせていただきます。

 まず、第5話の題名の「ダイナーの殺し屋たち」はそのままにヘミングウェイの短編「殺し屋」のオマージュです。

 ルパンと次元が扮する男二人のやり取りも、そのまま原作に忠実に、且つユーモアを混ぜそこかしこにヘミングウェイの台詞が隠されておりました。

 「殺し屋」では"ジョージ"という名のカウンターの店員は、アニメでは少女に変えられ「"嬢ちゃん"」に、頼んだメニューがないところもそのままに「それはディナーでして」という返答。

 そして作中の会話に垣間見えるヘミングウェイの話題たち。
例えば台詞には、「"10人のインディアン"」やら「"簡単な質問"だろ?」やら「"今日は金曜日"です」「ここから先は"追い抜きレース"だ」「一人頭"五万ドル"」「まさに"敗れざる者"」「まさに"陳腐なストーリー"」「やつにとっちゃ、あらゆる場所が"アナザーカントリー"」といった単語が登場するのですが、こちらの""内ははどれもヘミングウェイの短編の題名となります。
(大して詳しくなかったというのに、ちょうど読んでいた為、驚くばかりでした(笑))

 街の名前を尋ねられた店員は(このシーンもそのまま「殺し屋」にあるのですが)原作ではサミットと答えるところをヘミングウェイの出身地「オーク・パーク」に変更されており、
その店員が読んでいた本は正にそれらの短編が載っている短編集の題名「男だけの世界」

 更には背景に飾られた絵には「アルプスの牧歌」の風景画らしきものに、ダイナーが飼っている鳥は"カナリア"(こちらも短編の題名に"贈り物のカナリア"というものがございます)
 背景に書いてあったイタリア語もChe Ti Dice La Patria?(短編の題名です)
 更にはダイナー名は、"White elephant "
 白い象、と聞いてヘミングウェイの物語とくれば、もう思い出されるのはヘミングウェイ自身が最も愛した短編のひとつとされる「白い象に似た山々」でしょう。

 メタファーを大量に詰め込んだような作品の中でまた語られるのは、そのオマージュされた物語の「殺し屋」の裏話となり、ルパンが殺し屋の物語を踏襲しているようで、同時にその内容に触れるという、メタ発言にも思え、実に面白い。

 そして、この原作の「殺し屋」は一夜にして書き上げられたという話があるのですが、実は初稿では殺し屋が退散する前半部分しかなく、後半は後から書かれたものとなります。
 その為か、原作を読むと滑らかな流れが少し途切れてから繋がったようにも思えるのですが、そこに押井守監督らしい銃撃戦が起き、そこからルパン達の物語へと変化します。
 書き足された部分への導入部にルパンと次元、そして不二子ちゃんの種明かしを入れるところも印象的でした。

 そして一番好きなラスト、「殺し屋」を踏襲していながら、ニック(ヘミングウェイ自身を投影しているとも言われる短編に多々登場する人物)の台詞が、
「原作でも死を覚悟して"身を横たえて"いた男の消息はわかっていない」
 まるで原作を踏襲していることを意識しているような、物語の中から半分こちら側(視聴者側)に片足を入れたような発言に、初めて空想上のルパン達にまるで本当に生きている存在かのような"リアリティ"を感じられました(笑)

 ハードボイルドでありながら現実と空想の狭間を繋げる作品を描く押井守とヘミングウェイの雰囲気と初期ルパンのデザインがここまで違和感を与えないとは……
期待以上の脚本と、物語に合うやや固めの作画に頬のにやけが隠せませんでした(笑)

 何より、今まで見たこともないルパンなのに、まるで懐かしいようなルパン達だったというのが不可思議で興味深い。

 やっと、見たかったルパンが見れた。そんな気分になりました。

 意味があるようで意味がないような、暗喩に秘められた意味に答えがあるのかすらわからない世界観も、ヘミングウェイと押井守監督の作品に混在するもので、私はそんな"メタファーに溢れた世界"が現実だとも思っています。

 小さな出来事にも大きな意味があったり、大して意味がなかったり。
 しかし、その小さな事柄を突き詰めていくと、時に不思議なほど様々な繋がりが現れる。

 たとえば、私が読んでいた日に放映されたこと。
 リハビリの先生にホットアイピローを勧められた直後、それが届いたり、探そうと思ったものをプレゼントされたり、買った収納棚がピッタリに収まったり、そんな素敵な偶然をセレンディピティと呼ぶらしいのですが、最近、これが非常に多い!

 頑張っている人にしか起きないという説もあるらしい為、都合よく捉えてしまいましょう(笑)

 まあ、しかしなんだ。父上様が実は10月頃より脳梗塞で倒れ、入院中であったりもする不可思議堂ですので、わりと頑張っているのかね。

 さて、今年も残り僅かとなりましたが、拝見してくださった皆々様、母上様、父上様、おばあちゃん、更にお優しい様々な人々へ御礼申し上げます。
 今年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 心ある人々が、よいお年をお迎えくださいますように……♪

 画面に突如寄ってきたニャンズから始まりーー



最近お気に入りのお洋服をお召になったなるぽんさんとーー



色違いをお召しになったギフトくん。



こちらはリボン付きとなります。


 


不可思議堂 ちぃ


P.S.ついでの誕生日ケーキとご馳走、クリスマスケーキの写真はこちらです。ついでのついでに久しぶりのラーメンも載せておこう。


 実は連載時から好きだった呪術廻戦のピックをいただき、そちらを容赦なくグサグサと刺した誕生日ケーキから載せましょう。


間には毎年恒例の缶詰のフルーツとゆず茶を挟み、さっぱりとしたフルーツケーキ風に仕上げました。



 2枚目のこちらは、非常に美味な母上様手作りミートローフとローストポークのせサラダ。

 最早、美味しくないはずがない!



 そして、三枚目。

途中ニャンズにいちごを狙われるという事件にあいながらも、死守いたしました。大変だった……そして何故いちごを狙った(笑)

 こちらはバンホーテンのココアを混ぜたホイップにより、更に甘さ控えめで食べやすく仕上げることができました。

 間にはたっぷりのナッツとやはりゆず茶を挟みました。



 美味也美味也。



 最後は特に関係なく、私がなんとなくリクエストしたラーメン!

 大変美味でありました。


 さて、本日はとうとう大晦日。大祓をしなければねえ。

 年越し蕎麦も楽しみだなあ。


 以上!

 不可思議堂