彼は元夫の隣に腰掛けていた


すべて理解してそこに座っていることは・・・瞬時に察知できた





間もなく怪我人は名前を呼ばれ診察室に入った・・・であろう


相変わらず私は奥まった所に身を隠していたので


アナウンスを頼りに経過を感じとる


名前を呼ばれて暫く経ってから診察室辺りを覗き込むと


向こうの方には相変わらずぼんやりとして順を待つ夫の姿


その彼の死角に入り込むように太い柱の影を対角線に置く


診察はようやく終わり彼は出てきた


ギプスを巻かれ苦笑している


言葉をあれこれかけてあげたいがその様な余裕は無く


どんな言葉も気持ちがこもらない


「さあ行きましょう」


この言葉が私の真意であり彼もそれを理解していた様だった





待合フロアでの移動はとてもスリリングであった


玄関先の会計窓口は非常に明るくオープンなスペースとなっている


私はそちらに向かい窪んだスペースから移動しなければならなかった


・・・ゆっくりと空気と共に流れるつもりで歩き出す


群集より速くなく遅くなく・・・ぶつかることもなく流れを乱さないように


そして柱で立ち止まる


それを繰り返しているうちに彼は精算を終えてこちらを振り返った


私は夫に背中を向け己の足取りで歩き出す


多分私に背中を向けて座っている夫の方へは振り返るわけにはいかない


私たち夫婦は今回も背中合わせのまま別れる事となる


『さよなら・・・』


偶然の再会は悪夢だったのか暗示だったのか





「多分・・・この人かなって思って隣に座ってみたの」


「うん知ってる・・・それでどうだった?」


「何もわからなかった(笑)」


私は苦笑した


そこでその話はお互いオシマイ






・・・おわり