携帯番号も車も変えて逃れた元夫
・・・その彼が多分同じフロア内に居る
そう思っただけで手に汗を握った
私はロビーのほぼ真ん中に座っており
もしその名前の人物が夫であった場合
確実に見つかるという自信があった
すぐに移動したいのであるが下手に立ち上がると
自分の居場所を知らせることとなる
フロア内は私と同じ位の年代の女性も少なく
ただでさえ人目を引いた
伏せた目をゆっくりと上げ前方を見渡す
しかしそこに彼は居ない
横に居なければ後ろを振り向かずに隅に移動すればよい
右側・・・付き添ってきた怪我人が隣に居たため右側に居ないことは解っていた
左側・・・恐る恐る確認
「・・・!」
こともあろうに通路を挟んだ隣に彼は居た
一瞬しか見なかったがまぎれも無く彼だった
多分少し太った彼は
その物腰から私には気づいていない様子であった
気づいていればあんなに呑気に座っていないであろう
わたしは付き添ってきた怪我人に手短に訳を話して
一刻も早くそこを離れる必要があった
『どう説明すればいいのだろう』
数十秒の間に色々な事を考えなければならなかった
長く話してる場合じゃない・・・しかし
どういうことなのか?等と聞き返されると
その会話で夫はこちらを振り返ってしまうかもしれない
私の手はじっとり汗を握っていたが
考える猶予が無いことだけは確かだった
・・・つづく